常盤しのぶ

インターステラーの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.7
『とんでもない映画を観てしまった』。記録をつけながらの映画鑑賞歴はまだ1年にも満たない。しかし、世の中にはこのようなとんでもないバケモノみたいな映画が息を潜めていることを、身をもってわかってしまった。

本作は3時間近くある。もし、本作が2時間、そう、あのシーンで2人ともあの星に向かってエンディングを迎えていたならば、ここまでの感動と興奮は得られなかった。しかしそうはならず、あの怒涛の伏線回収と結末である。終盤の数十分、私の口は空いたまま塞がらなかった。

単に周りとは違う一風変わったSF映画を作ってやろう、という軽い気持ちではここまでの怪物は生み出せない。ポストアポカリプスへと向かう世界を当事者たる人間とAIの愛をもって緻密に、荒々しく描いてみせた。

『愛は時空を超える』。バカげた空想を想像でもって創造してみせた。途中のアン・ハサウェイが愛だのなんだのと訴えるシーンで、私は彼女のことを冷めた目で見ていた。結局生き延びなければ愛もクソもないのに、と。しかし、あのシーンを見せられては何も言えなくなるではないか。彼女は正しかったのだ。人として、まず持つべきは彼女のような考えだった。当時のクルーの中で彼女だけが人間だった。

本作を観終わった後、私はしばらくの間魂が抜けて動けなかった。終盤の数十分間、ずっと絶え間なくドデカいハンマーで脳天をカチ割られ続けているような、そんな感覚だった。中盤まではなんてことのない、本当になんてことのない内容だっただけに、その落差で頭の中が酔ってしまった。星と星とが重力で繋がるように、人と人とは愛で繋がる。インターステラーとは、愛だ。