うみぼうず

インターステラーのうみぼうずのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
5.0
絶対映画館で観たい!と思い配信視聴をずっと我慢していましたが、待った甲斐がありました。あり過ぎました。
IMAXレーザーGTでの宇宙空間はまさに別次元。最高の映画体験を堪能。この体験価値は何者にも替えがたく、平日のレイトショーなのにほぼ満席なのも納得。画面の大きさ、スケール、精緻な映像は圧巻。ロケットの噴射音、後ろから前から押し寄せる重力空間の圧迫感が身体に染み込んでくる。
そしてハンス・ジマーの音楽よ。オルガンの荘厳さが映像のスケールを後押ししていて、恐ろしくも神々しさを感じさせてくれる。
上映後、会場内から拍手が起きる。IMAXレーザー、恐るべし。

肝心の内容はというと、思っていたより分かりやすくシンプルなストーリーラインながら、濃度の高いSFで大満足。
SFをすんなり理解出来たのは、ワームホールはドラえもんで見たし、時間の流れが外界と違う現象はドラゴンボールの精神と時の部屋、四次元ブラックホールはキン肉マンで見たし、そして重力が時間を超越するのはジョジョで何度も目にしている。予習バッチリよ。手塚治虫の火の鳥にも通ずる宇宙の旅と超次元的な存在。そう考えると日本のマンガっていろんな現象や理論を網羅してるな。
そういえば昔、死ぬ時はブラックホールに飲み込まれて無になる死に方が理想だなぁとか考えてたこと思い出した。いずれ叶えたいな。

ワームホールやブラックホールなど科学的な設定で時間と空間を超越する壮大な物語に一貫して流れるのは「愛」という普遍的なテーマ。科学と感情が対立しつつも、最終的には共存する形で描かれているのが印象的でした。

「愛が重力を超える」というセリフは、劇中アン・ハサウェイにイライラしつつも、科学的思考の中に人間の本質的な感情を織り込むことこそが、ノーラン監督の哲学なのかと。愛という目に見えない力が、時間と空間を超えたメッセージとして機能する。そしてどれだけ科学が発展しても根幹にある愛や人間性の重要性も示しているのかな。「彼ら」は決して自分たちの為だけでなく、我々にもメッセージと行動や意識の変容を求めているのかも。

SF要素はありつつも一貫して家族の物語であり、愛の物語。こんなウェットなストーリーは意外…と思ったけど、よく考えるとノーラン監督の作品て登場人物は決してドライでなく、人間の根底にある感情が行動原理になっている場合が多い気がする。

映画の展開としてはともかく、登場人物としてはそう選択せざるを得ないよな、と思わせる行動が面白いなと思う。人は正しい行動ではなく、必要(と思う)行動を行うという、不完全さも含めた人間性を肯定している。マン博士なんて名前そのものだもんね。
そうして考えるとTARSは人間性を有しているとも言える。感情を擬似的に表現したりユーモアを言うこともできるし、あらかじめプログラムされているとはいえ自身の判断基準を持っていて、できる限りの最大限の行動を取ろうとする。これはもう人間では...?
でもTARSが最後まで理解できなかった「彼ら」に関しては、機械プログラムと人間を分ける最後の基準は「愛」ということなのかなぁ。

マシュー・マコノヒーの演技は素晴らしくて、特に最後ら辺の表情は完璧に子どもを見る優しい目になっていて、役者って凄いなと思う。マシュー・マコノヒーはなんとなく飄々とした優男のイメージをずっと持ってたけど、マッチョさもありつつ頭の回転も良いが、人間味溢れる魅力的な役を本当に見事に演じていた。
幼いマーフ役の子も泣き顔や切ない表情が心境を思わせるし、アン・ハサウェイは優秀だけど少しズレているが実は核心をついている役どころがピッタリだった。

水の惑星、氷の惑星は実際にロケしたというし、更にはあの多次元空間もセットで作ったというからノーラン監督は流石のこだわりぶりである。だからこそ真に迫った演技になるのだろうし、重さを伴った映像になるんだろうなと思う。
特筆すべきは乗り物外部の固定カメラで、飛行中の宇宙船外部を映すことで映像にリアリティがこれでもかと上書きされて、現実での事象と思い込まされる。もはやドキュメンタリーの域。

映像200点、音響200点、ストーリー95点、演技100点という感じ。IMAXのための、いやインターステラーのためのIMAXだと思う。最高の映画体験。をこの映画で体験できたことは本当に良かった。既に3回ほど配信で見返しているが、またIMAXで観たい。
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