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あなたを抱きしめる日までのhariのネタバレレビュー・内容・結末

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

宗教のこういうところが嫌なんだよな…と思ってしまう映画。
善悪が教義や聖書に基づいて決まるから、宗教によって悪とされていること以外は平然とやってのけるところ。そしてその行為が他者から見て非道なものであっても、それを裁くのは神なので信者は反省すらしないところ。

性欲を抑え純潔を守るのはなかなかできることではないしすごいなあと思うけれど、そのせいで一部のシスターたちに歪みが生じているのはどうなんだ…。それで人を傷つけているのに。

自分は耐えて純潔を守ったのに、そうしなかった女はいい男に抱かれ性の歓びを知り愛する我が子を得て、あまつさえその子どもは遠方から遥々母親を探しにやってくるほど母を求めている。

禁忌を犯した人が幸福を得て、きちんと我慢した自分は何も得られないなんて耐え難いことだというのは分かるけど。

生物的本能に由来する嫉妬心の他に「決まりを守ったのにどうして私は?あの人は破ったのになぜ幸福なの?」と信仰への揺らぎが生じることが度々あったのだろうな。
でもその揺らぎを認めてしまうと宗教に費やしてきた人生を丸ごと否定することになりかねないから、その揺らぎはなかったことにしなければならない。今更揺らいだところで老いた体じゃ恋も性体験も子供も手に入らないし。

自己と人生を肯定し、嫉妬心をどうにかするためにも、純潔を守らなかった彼女にはきちんと苦しみが与えられなければならない。だから自分自身の手で、親子の再会の機会を永遠に奪うという罰を与えた。

本当に嫌というほど「人間」って感じ。ちっとも神に近づいていないのでは?

出産を見守ったシスターもそう。逆子なのに鎮痛剤を与えない。お前は苦しむべきだからと。
身籠った女性たちが苦しめば苦しむほど宗教と自身が肯定されるシステム、本当にえげつない。

記者が赦さないと言ってくれて正直スカッとした。でも途中で挟まれる新聞社のゲスさもなかなかだった。まあその向こうにはいち消費者である自分がいるのだけども。
hari

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