高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」の謎めいたオーナー、ゼロ・ムスタファが語る彼の人生、そして彼に影響を与えた凄腕コンシェルジュとの大騒動を描いたコメディ。
色彩と独特のカメラワークに釘付けになったのはもちろんのこと、小気味よいテンポで進むキャラクター達のやりとりには何度も吹き出してしまった。中でもやはりゼロとグスタヴの掛合いは面白く、弥次喜多コンビのようなコミカルさも、ホームズとワトソンのような信頼感も合わせ持っている。しかし、意外にもこの昔語りの締めくくりは少ししんみりとしており、軽い喪失感というのか無常感のようなものを感じさせる。
枠物語的な構造やカメラワークの妙技により見る者の立場は常に映画冒頭の女性の立場になるのだろう。しかし、見た後にはその没入感に驚くはずだ。
