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グランド・ブダペスト・ホテルのmakaのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

まず作風について言及すると、非常に独特で今までに観たことのない作品だった。
ミスタービーンと少し似た大げさな演技のように古典的なギャグ調の世界観を主軸として、BGMがその曲調のまま人物が死亡するようなシリアスなシーンを挿入することで、脳が混乱しリアルさの境目が曖昧になる。また物語の聞き手である眼鏡の人を通して私たちにゼロが物語を語ってくれるという映画のコンセプト上、中盤で一瞬現実に戻されるシーンがあり、それも曖昧さを醸し出して、ある種夢のような感覚を覚えるように作られていると感じた。
美術館での遺言執行者と探偵の追いかけっこが分かりやすい例であるが、自分を殺しに来たであろう人物と追いかけっこをするという本来恐ろしいシーンであるにもかかわらず、大げさな演技と、BGMはCARTOONのアニメで流れていそうな、怖さはない曲で進行していて、出口が見えた際に急に現実味のある緊張した演技と、その後のちぎれた指を無音で見せられ、シリアスな雰囲気に一瞬で変化されることで今自分がどんな感情になっているのか自分でも分からなくなる。また、私がビビりなだけかもしれないのだが、セルジュの姉が殺された際も、張り詰めた緊張感、といった曲調のBGMではないため、かごに生首という恐ろしいシーンなのにどこか現実味がなく、しかしながらちゃんとビックリさせるような怖い生首と大音量のBGMで急に現実に引き戻されるような感覚になる。

次に映画として言及すると、とにかくストレスを感じさせないような気持のいい作品だった。1.5時間とは思えないような濃密なストーリーとそれを可能にするテンポ感の良さ、そして一つ一つの動きに意味を感じる滑らかなカメラワークで本当に鑑賞していて一切のストレスを感じなかった。またキャラクターも悪役を除いて全員がサッパリとしている性格であり、特にグスタヴが部下を大切にし、間違った際には謝罪し、おかしい点には誰相手でも異を唱えるような素晴らしい人物で、これも観ていてストレスを感じない要因となっている。

作品全体を通して無駄なシーンが無く、一回目はテンポの良さとギャグ調が印象に残り、2回目は監督の技術と作りこみに驚嘆してしまう映画。
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