ふむふむ

グランド・ブダペスト・ホテルのふむふむのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ポスターに目を引かれてみてみると、ウェスアンダーソン監督の映画だった
絵本的と言われながらも、どこかメッセージ性を孕んでいそうな作品は唯一無二の体験をさせてくれる



グランドブダペストホテルのオーナー、グスタヴHが大富豪の客から高価な絵を相続するところから事件に巻き込まれていく
暗殺、脱獄、逃亡と楽しい要素が満載だった



しかし、映画には似つかわしくないどこか演劇的だったり作り物の様なセットから、この話が作り物だと強調されているような印象を受ける
通常、映画とはよりリアルな描写を追及して画面の中に没頭させるものだろうが、ウェスアンダーソンはその逆を行っている

シンメトリーで原色、ビビットカラーの作り物の様な舞台、所々に配置される説明的な文字、登場人物の説明の入る動きがサイレント映画の様に感じる

それに加えて可愛らしい映像は絵本から想像したものにも思えてくる
これは入れ子構造が深くなるにつれて読者の想像の余地がより増える事による現実とのずれをあらわしているのかもしれない



物語の終盤、次々と大切な人達が亡くなり話が終わる
そこから一気に現実に引き戻される感覚に陥る

映画(本(ホテルオーナーの話→作家の話)→少女の読書体験)

ここからさらに

映画→映画を見終わった私たち

となり、映画を見ていたはずが、少女のように本を読み終わった読後感のようなものを感じた
それによって、ただ映画を見ただけでなく、作中で散見された二次大戦下のドイツ、ヨーロッパが行ってきたマイノリティへの迫害も裏テーマとして感じられた
シュテファン・ツヴァイクの経験に着想を得たとあったが(これも”本”的)、彼が過ごした時代が描かれた作中の本は、少女にも視聴者にもメッセージを発しているのかもしれない
「当時はこんなことがあったが、今はどうだい?」と
ふむふむ

ふむふむ