バラード×クローネンバーグ!
文字通りにキズをおった男女が、インモラルで倒錯的でグロテスクながらも、しっとりと上品でエロチックな遊戯へ耽溺してゆく、その破滅的な異常さと魅力とを描く秀作。
囁くようなセリフや舐めるようなショットなど、映画としての何もかもがなまめかしく、しとやかな背徳感は谷崎の初期短編のよう。ハワード・ショアの抒情的なスコアもいいですね。なにより若き日のジェームズ・スぺイダーがスマートでセクシーでかわいい。
しかし、おおよそ性的でないはずの自動車とか矯正器具とかが艶っぽく映るの、さすがクローネンバーグですね……。対物性愛がテーマの作品って定期的に世へ出ますが、やっぱり本作は出色の出来です。
それにしても有名な交通事故を再現する同好会、公権力に追い立てられ蜘蛛の子散らすように逃げるところまで、いかにもひと昔前のアングラカルチャーな集まりって感じ。