自らの信念に基づき自殺幇助を行い、最終的には殺人罪で有罪判決となった実在の医師をアル・パチーノが演じてる。
脇も豪華で、監督はバリー・レヴィンソン。
実際のニュース映像なども交えて、かなり詳細な再現をしている。
ジャック・ケヴォーキアンは殺人罪の判決を受けているので、シリアルキラーとして捉えられることもあって、彼のことは日本でも報道されたので知る人は多いよね。
死を処方するとは…そう、これは、安楽死の幇助の話。
年老いた医師が、病気に苦しみもう死にたいと願う患者とその願いを叶えてやりたいと思う家族を目の前にして、医療の限界を感じ、患者と家族の同意の上で、自作の自殺器具を用いて、幇助を行う。
初めて実行に移す時のシチュエーションとかシーンとかがもう実に生々しい。
計画通りに行かない状況もまたスリリングで、いったいどうなるんだろうとハラハラ。そして、患者は本当に苦しまずに逝けるのか…なにか手違いはないのか…
ジャックが最後の手を下すことは、彼を殺人者にしてしまうのでできない。あくまで、患者本人が最後の薬品投与の引き金を引く。
躊躇なくもうこれ以上待てないくらいの勢いでヒモを引く患者。見ていて本当に辛かったし怖かった…💦
多分、経験してきた苦しみ以上の苦しみなんてもう無いと思ってるんだろう。苦痛から逃れられるのは死しかないと思ってるのだよね。
ジャックはそれを見守り、死亡証明書を書く。
ジャックの若い頃からの医師としての活動などは描かれていないから、彼の根本的な性格とかそんなんは分からない。彼の子供の頃の辛い記憶は語られるけれど、それで充分彼を知り得るとは到底思えない。
人の死が神の領域であるなら、治療法も見つからないまま、ただただ延命するだけの処置はなんなのか?
ジャックが言うように、医学そのものが既に神の領域を侵していると言う考えは、極端ではあっても間違いではないなと思える。
キリスト教は自殺を罪としているし、イエス・キリストは最後まで苦痛に耐え成就した。
でもね…その彼らの苦痛とキリストの苦痛を同じに考えてはいけないよね。当然。
この映画ではジャックの信念をと理由あって安楽死を求める人たちの切実な想いを前面に描いていて、そこに関わった否定派、賛成派の人々の両方に向けて安楽死問題を提起してくる。
You Don’t Know Jack という原題
そうわたしは彼の全てを知っているわけじゃない。だから、彼が正しいか間違ってるかなんて分からない。そして、病気に苦しむ本人や家族の心の中はその当人でなければ誰にも分からない。
恐ろしいことだけれど、そこに微塵でも悪意や第三者が知り得ない負の何かが存在していないということも言い切れない。これって、当人ですら分からないこともある気がする。
現代の司法の不完全さが如実に表されているこの事件。
医療だけに留まらず、社会的にある多くの問題を包含している。
出演者が豪華で、ジャックを演じるアルパチーノの演技も、半ば戸惑いながらも彼をサポートするジョン・グッドマン、安楽死を望む人達を助ける団体を運営しジャックを支えていく女性をスーザン・サランドンなどなど。
スーザンは、この後「ブラックバード 家族が家族であるうちに」という映画でも安楽死をテーマにした作品に出演してる。
実際にジャックが関わった人達が最後のエンドクレジットに映し出される。
アダム・ドライバーにそっくりな患者が登場して、あれ?アダム?いや…ただ似てるだけ?って思ったけど、やっぱアダムだったんだ。1分もない出演だったような。。。
重いテーマだけど、見やすくできてるのはバリー・レヴィンソンだからかな。