このレビューはネタバレを含みます
私は仕事柄「障がい」がテーマの映画をたくさん観てきたけど、これは見逃してました!
職場で勧められて観てみたら…メチャ感動…!隠れた名作やと思うから、たくさんの人に観て欲しい。「自閉症」を知らない人にこそオススメします!100分程度と短いし、全く退屈しないストーリーですよ。
だから、ポスターとタイトルがもったいないわな。「テンプル・グランディン」だけでいいのに、「自閉症とともに」という副題と一緒にヘレン・ケラーみたいな主人公の姿…説教臭いドキュメント風の作品かと思ってしまうやん。
これは、一人の女性が苦悩して、工夫して、また落ち込んで、闘いながらも自分らしく生きていくという素晴らしいヒューマンドラマなんやで!
観終わってから「テンプル・グランディン」についてネットで調べたけど…本当にスゴイ人やわ。
以下はネタバレ…
演じたクレア・デインズが最高に良かったわ〜。「ロミオ&ジュリエット」とか「ターミネーター3」でも瞳が魅力的やったけど、今作ではあの瞳が、困惑して、泣き叫んで、悔しがって、大喜びして…生き生きと表現されてる。「自閉症」について詳しく調べたのがよく分かるなぁ。
テンプルの視界にいろんな線が出たり、写真みたいに静止画が入るのが面白い。自閉症特有の「カメラアイ」を上手く表してるなぁ。
テンプルはパニックになった時に、牧場の家畜牛のための「締め付け機」に自身で入って落ち着く。あーなるほど…。昔、ドナ・ウィリアムズの「自閉症だった私へ」を読んだことを思い出した。学生の頃、私がボランティアでみていた知的障害のある男の子も、布団で「簀巻き」にされるのが好きで、何度もせがまれて困ったことがあったなぁ…。体をギューっと締め付けられると本当に落ち着くみたい。でも、はたから見ると「変な行動」にしか見えないんやな。誰からも理解されない中、視覚障害のルームメイトが受け入れてくれる。
そして、サヴァン症候群で「視覚優位」だからこそ、突出した才能を発揮するんやね。牛の視点で屠殺のプロセスを考案するなんて、他の誰も考えつかへんわ。牛の命を尊重してるんやね。素晴らしい発案なんやけど、そこはカウボーイみたいな男性社会…。変人扱いされて孤軍奮闘する姿は見てられない…。実際はもっとひどいことをされたんやないかな?多くの人なら折れてしまうところが、特有のしつこさと頑固さで乗り越えていくところは痛快やった!
テンプルの母親の気持ちにも共感したで…。医者から「母親の愛情不足」なんて言われてしまうような、自閉症の療育なんかなかった時代。母も苦悩して試行錯誤を繰り返しながら育ててきたんやね。
卒業式のシーンでは私も涙が止まらなかった。
ラストシーンが素晴らしい。「自閉症全国大会」で、研究者が「自閉症は心因性」とか演説し、クルクル回る女の子は「落ち着きなさい」と叱られる。それを見たテンプルは、これまでの半生を思い出して立ち上がり語り出す…。
ステージに向かう先にはたくさんの「ドア」。そう、テンプルが開いたドアによってたくさんの人の世界も広がったんやろうな。今も講演会をたくさんしているらしい。
障がい者自身やその家族に勇気や励ましを与える傑作だと思った。でも、なぜかレンタルないし、U-NEXTでしか観られないんやな。いろんな人にすすめようと思うからDVD買おうかな。
追記:DVDは日本語字幕のないバージョンしかないやんけ!なんでやねん…。