◆あらすじ◆
デンプル・グランティンは幼い頃に自閉症と診断され、周囲に馴染めないでいたが、科学の教師・カーロックとの出会いをきっかけに大学まで進学して見事に動物科学の修士号を取得する。その後、テンプルは食肉加工場での牛の苦痛に配慮した設計で成功を収める。
◆感想◆
自閉症ながら周囲の偏見や苦難に負けずにその才能を開花させたテンプル・グランディンの伝記映画であり、自閉症への理解が不十分だった時代に彼女が成し遂げたことの偉大さを心から感じることのできる作品となっていました。
テンプル・グランディン(クレア・デインズ)は幼い頃に自閉症と診断されてから、学校にもまともに通えない状態でしたが、彼女の優れた能力を認めたカーロック先生(デヴィッド・ストラザーン)と出会ったことで、彼女に学業の道が開かれます。テンプルの母(ジュリア・オーモンド)とカーロックの考えは共通していて「テンプルは誰にも劣っていない」ということであり、自閉症への理解が不十分だった時代に極めて優れた判断だったと思います。
テンプルは叔母のアンの牧場で牛を大人しくさせる装置を見て、彼女も自分を落ち着かせる装置として自作します。装置を作れること自体がかなり凄いことだと思うのですが、学友たちは彼女を奇異の目で見ます。そんな中、テンプルのルームメイトとして盲目の女性が現れ、彼女がテンプルを救ってくれます。視覚で理解するテンプルと聴覚で理解する彼女だからこそ理解し合えたように感じました。
テンプルの前に多くの苦難が待っていて、その度にテンプルは「新しい扉を開こう」と考え、前へ進んでいきます。彼女のその勇敢な姿は健常者に勝るとも劣らない精神力の強さでありました。テンプルは苦難の中で様々な人と出会い、その縁に助けられる姿も描かれていますが、それはテンプルが扉を開け続けたから出会うことができたのであり、決して運の問題じゃないと思います。
そして、テンプルはストーリー終盤に自閉症の人々がどのように感じてどのように思っているかをよく理解していて、彼女が説明してくれたことは自閉症を理解できない私にとって目から鱗が落ちる思いでした。これほど適格に自閉症の人々の感覚をきちんと説明できる人は他に無いと思います。
テンプル役のクレア・デインズの演技が素晴らしく、唯一無二のものになっていました。一見すると他の人とは異なるように見えるも、見続けているとテンプルがどう思っているかがしっかり伝わってきて、テンプルの熱意を感じることができました。
また、映像としてテンプルに見えている風景が観ている私にも理解しやすいように描かれていて、とても良かったと思います。
とても良い作品でした。自閉症について理解しやすく、それでいて健常者を超える熱意で前へ進むテンプルの姿に勇気づけられるとても熱い作品でした。
鑑賞日:2025年1月30日
鑑賞方法:U-NEXT