Yoshishun

鑑定士と顔のない依頼人のYoshishunのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
3.6
『ニュー・シネマ・パラダイス』を手掛けたジュゼッペ・トルナトーレ監督だから、年齢差を超えた男の友情は本物だ!、と思わせるという意味ではどんでん返しとは思える。しかし、劇中で明らかに無駄にフォーカスしている人物がいたり、言動で強調されている部分があるせいで、今後の展開が読めてしまうのが惜しい。どんでん返しするための伏線の散らばり具合があからさまなので、終盤の種明かし自体にはあまり驚きはない。

では、どんでん返し以外ではどうか?
描かれるのは、孤児院育ちで絵画の女性にしか魅力を見出せなくなった童貞老人のマジ恋物語である。明らかに年齢差があるので実らない恋だとしても、劇中の台詞の如く、どんな贋作(=偽物)にも本物は存在しているのだ。姿の見えない女性だとしても感情は本物であり、それが結末の非情さを引き立てつつも、ほんの僅かな幸福感を思わせる。初な乙女のように恋する老人を好演したジェフリー・ラッシュの演技力も相まって、本物の恋を追体験する意味では中々良かったと思う。
Yoshishun

Yoshishun