柚子

鑑定士と顔のない依頼人の柚子のネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

最後ヴァージルが自身の部屋を訪れストーリーが急展開を迎えるシーンでは一瞬心臓が止まりそうになった。
いつから?どうして?と脳内で必死に思考を巡らせると、思えば不自然な点がいくつもあったことに気付かされる。
そもそも引きこもりにしては妙にクレアが垢抜けているけど、そんなこと疑いもしなかった。
でも全てヴァージルを嵌めるため周到に用意された罠だと思えば全て辻褄が合ってしまう。

悲しくて、やるせない気持ちになり、体の力が抜けるのを感じた。
でも元はと言えばヴァージル自身もオークションでは不正を働いていたり、ビリーを始めとする周囲の人々には高圧的な態度をとっていて、全ては因果応報、勧善懲悪なのかもしれない。


“いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む”
この作品において重要なキーワードとなったフレーズが体現されたシーンがいくつかあったように思う。
一つはロバートの彼女であるサラが、クレアという女性にヤキモチを妬いたシーン。
このサラの発言を受け、ヴァージルはロバートに対し怒りを露わにするわけだけど、これはきっと作戦の一つではなく、好色のロバートならではのうっかりミスかなと思った。
サラは仕掛け人ではなく実際にロバートの彼女で、本当にクレアに嫉妬しただけではないだろうか。

二つ目はヴァージルにとって最後のオークションの後、彼と抱擁し引退を労うビリーが発した「会えなくなると寂しい」という言葉。
この時点でヴァージルはあくまでオークションの仕事を引退しただけであって、友人である以上会えなくなるわけではなく、ビリーのこの発言はなんだかおかしい。
思うにこのビリーの発言は、全ての作戦を完遂し復讐を終えたビリーのうっかり漏れた本音なのでは?

そして三つ目、これは不確定でこうであってほしいと私自身が勝手に思っていることだけど、クレアは多少なりともヴァージルに対して情はあったはず。
クレアがヴァージルに接近したのも全ては陥れるための罠だったけど、そこには真実の愛もあったと信じたいな…。
柚子

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