なちここ

鑑定士と顔のない依頼人のなちここのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

しんどい。 オールドマン側に立つと、虚無感と喪失感から抜け出せない。余韻が抜けない。

愛を知らぬ人間嫌いの男は、奇妙な依頼人と出会い変わっていく... 恐怖症のある女も次第に変化していき、似たもの同士の2人が結ばれるラブストーリーかと思いきや。 壮大な復讐劇!!!

正直、解説を読み漁らないと復讐劇かすらも理解出来なかった私。 ビリーがお友達顔しているが深い因縁があるのは読み取れて、コレクションを攫ったのも分かったがロバートや女もそのために用意された数多の人間達だとは思わなかったわ〜。。
愛を見つけたオールドマンに若干の気持ち悪さは覚えたけども、それも良いかと思ったけど、ここまでドン底に落とすとは。

解説を見れば見るほど納得するけど、この映画の用意周到さ、丁寧な造りと客に一切の疑いを持たせないストーリーには感服した... 1番頭使った... もっと勉強します。

生涯をかけたコレクションも愛する人も長年の友人も失い、文字通り意気消沈のもぬけの殻になったオールドマンがとても辛くて見ていられない。
彼女が語ったあのカフェで全てを理解しながらも愛する人をずっと待っているんだろう。
救われない映画だが、監督がハッピーエンドと語る理由は、愛を知らない老人がたとえ贋作だとしても愛を見つけられたから。

全てが嘘偽りの贋作でも、作中で語られたように真実が混じっているかもしれない。
というのに乗っ取るならば、彼女との愛はもしかしたら少しは真実が降り混ざっていたのではないかと信じなければやってけない... "愛してる"あの台詞は本心だったのかも。

ここまで心をかっさらってもぬけの殻にしてしまう。全てを失った彼もこういう静けさの中の困惑と絶望か? あの寂しさと消沈っぷりはこの身に起きたら耐えられない。

そしてまた音楽が良い。絵画の女性達が囁きかけているかのようなコーラスと哀愁漂うストリングスが映画の神秘と虚無と喪失に拍車をかける。

しんどい。 決して善人ではないがオールドマンに感情移入してしまっている内は(バルボッサ好きなので)、脅威の伏線の周到さを持ってしてもまたこの映画を見直すのはとてもしんどい... 心の回復を待つしかない。
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