春とヒコーキ土岡哲朗

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロンの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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やっとこさ、最強が集結した。

前作の比じゃなく、良い。前作は、終盤のニューヨーク決戦以外は、画がチープに見えた。今回は、最初からアベンジャーズ全員で戦う上、全編通じて「死」の匂いが蔓延した高級感ある一本だった。ユーモアも、今までで一番、ちゃんと面白かった。最初に言っていた「言葉が汚いぞ」を最後の戦いでも持ってきたのは、最初の繰り返し=「今まで通りのおれらで、できる」という頼もしさにも見えた。前作で市民権を得たら、こんなにも本気を出せるのか。通過点としての要素も強い今作だが、1回目ではできなかった深みを全開にした、真のアベンジャーズお披露目になった。

映像で「頂点」の実力を示す。キャップの盾が大活躍だった。ウルトロンに投げつけて跳ねかえってきた盾を、蹴ってもう一度ウルトロンにぶつけるところが、キャップらしからぬ動きなのも相まって、意表を突かれた。クイックシルバーの見せ場は、『X-MEN:フューチャー&パスト』とカブるためか「クイックシルバー目線」がないのが残念。

総決算なストーリー。重要作と言われた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の続編的側面は大きい。シールドの壊滅によるヒーローの野ざらし状態が見えてくる。トニーが実行したウルトロンプログラムは、キャップが阻止したシールドの野望と似た、機械まかせの正義執行。各人の根本的な弱点に再度焦点を当て、正義を自任する傲慢さというジレンマに包まれている。今回は、シリーズで最も、皆がしっかり悩んでいた。が、ホークアイのスカーレットウィッチへの回答が全て。過去なんてどうでもいいから、今をどうにかできるやつが動け。悩みの描写の暗さをすっとばしてきたMCUだが、今回、悩みをしっかり描いた上でホークアイの言葉があり、悩みを描かなかったこと自体が、一つのメッセージになった。くよくよすることは何も生まないのだから、できることを探せ。

死の2作目。監督が『帝国の逆襲』的な2作目と称したのが頷ける、辛い戦いだった。トニーは、『アイアンマン3』同様、ニューヨーク決戦での「宇宙」がトラウマとなり、やがて訪れる地球外の敵への敗北=仲間たちの死を恐れ、ウルトロンを生み出す。ウルトロンの行動心理は、淘汰されることを恐れ、逆に人類を淘汰しようとする、死のなすりつけ。死を恐れる者たちが、死を生み落とす。
ジャービスが、自分が殺されながらも、ウルトロンに核兵器を使わせまいと暗号を書き換え続けていたのは熱かった。クイックシルバーの死には驚いた。新たな仲間として今後の作品にも出るものと思っていたので、(本格的には)初登場の今作で死ぬとは。そして、ウルトロンの死さえ、悲しい。唯一の理解者である人工生命体ヴィジョンが、ウルトロンの最後の一体を駆逐する。ヴィジョンにとっても、自分に一番近い存在をなくす瞬間。命を奪うことが正義なのかという、序盤でのウルトロンの問いかけから、命の尊さが感じられた今作。尊いウルトロンの命を奪うことで終わる。逆らえない宿命に、切なくなる。