不覚にも涙してしまった。
もう最初の投稿映像の二人のやりとりだけでうるうるしてしまった。
ああいう瞬間って、ある。
何年か１度、不意にやって来る。
その後何度も反芻してしまうようなやりとり。これ童貞だけにしかわからない感覚じゃないよね？あ、あるよね？
途中からある作品の事が重ねられてしょうがなかったんだけど、終盤のつぐ巳ちゃんの台詞で確信した。これ日活ロマンポルノの名作『天使のはらわた 赤い教室』にオマージュを捧げてるというか、白石監督なりの返答なんじゃないかと。
無職の櫻井くんは行動が超絶にキモいと思われるかもしれない。だが待ってくれ。彼は38歳童貞で彼女いない歴＝年齢なのだ。普段は空き地で空のガチャポンに爆竹を入れて爆発する様をビデオ撮影して１人で喜んでいるような人なのだ。つまりは少年のままなのである。見た目おっさんだから不審者の変態にしか思えない。だけどあれが小学４年生ならどうだろう。微笑ましくはないだろうか。
俺も普段から自分のことを妖怪みたいだと自虐的に言うから譲歩してしまう。
白石監督は「覚悟はいいか？俺は出来てる！出来てない奴はしぬッ！」って作品をしばしば出してきますが、本作もまた、覚悟を問われた人間の土壇場での選択を描いた真っ当な物語でした。
