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なみのおとのかーのレビュー・感想・評価

なみのおと(2011年製作の映画)
3.9
ずっと観たかったのですが、新文芸坐の特集で劇場で観られてよかったです。

震災から間もない頃のこの作品、そのときの空気感や言葉がこうして10年以上だった今も伝わるのはとても貴重なものだと思います。

特に、こういった被災者の方へは個別インタビューが多いですが、この作品はほとんど関係者や身内の方との会話をもとにつくられている。相槌や表情、同じく辛い思いをした相手がいるからこそ出てくる言葉と、その一方で同じ「被災者」でも住む地域や、そのときの状況や、家族構成、家族との死別…そしてその捉え方は違うということ。たとえ家族であっても一人一人同じ状況の方はおらず、向き合い方も違うということがとてもよくわかる構成になっていました。被災された方自身からも、「友達になんて声をかけたらいいのかわからない」という言葉があった。

でも何よりここに映っていた方々は生きられた方々で、その方たちがご家族や仲間と話す様子はときに可笑しく、愛しく、特にご夫婦の会話では劇場でくすくす笑う声が起きていました。とても素敵でした。
日々何気なく友達や家族と一緒にいて愚痴を言い合うこと、笑い合うこと、好きな映画の話をすること、そのなにもかもを愛しく思いました。新地町の海は今どうなっているのでしょう。
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