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パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間のodyssのレビュー・感想・評価

4.5
【こんなに面白い映画はそうそうない】

ケネディ大統領が暗殺されてから半世紀以上。
この映画は、暗殺の謎を解こうとするものではなく、大統領殺害という大事件に巻き込まれた関係者や一般市民の様子を描くことに徹しています。

ですから、単なる謎解きとか、事件の核心に迫るといった、一般ウケしやすい内容だと思って本作を見ると失望するかも知れませんが、私たち一般人が大事件に際会したとき、どういう立場に追い込まれるのか、何を強いられるのかといった視点で見るなら、これほど面白い映画はありません。

例えば、単に大統領のパレードを撮影するつもりで8ミリカメラを回していたら、大統領が撃たれるまさにその瞬間を映してしまった一般市民。今ならイベントがあるとテレビ局などによる撮影が周到に行われますし、また警察による監視カメラも街なかに増えているので、一般市民が偶然映した映像がFBIや大手マスコミから求められるという機会は少ないでしょうが、この時代のアメリカにあってはまさに偶然から一般市民が重要な証拠物件を持つことになってしまう。そしてそれはその市民自身にも深い心理的な影響を及ぼすのです。

このほか、ケネディ暗殺を阻止できなかったシークレットサービス、瀕死の大統領が担ぎもまれた病院の医師やナース、そして暗殺犯とされたオズワルドの兄が登場します。それぞれに、この事件によって小さからぬ打撃をこうむることになるのです。

一見すると地味な素材ですが、映画が始まると目をスクリーンから離せなくなります。こういう素材でこういう作りの映画を構想した人たちに敬意を表したくなる。今年ナンバー1の映画かも知れないな、と見終えてから思いました。
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