かたゆき

アデル、ブルーは熱い色のかたゆきのレビュー・感想・評価

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
3.5
「ねえ、エマ。初めて味わったのは何歳のとき?」
「何を?」
「女の子」
「女の子?それは私が女の子といつキスしたかってこと?それとも食べたかってこと?」
「キスよ、もちろん…。その先のことは後で教えてもらうわ」
「14歳のときよ、アデル」
「そう…、エマはやっぱり女の方が好き?」
「両方試した、男も女も…。それでもやっぱり女の方が好き。アデル、絶対よ」
「エマ、私もあなたとキスしたい」――。
17歳の女子高生アデルは何処にでも居るような平凡な女の子。
毎日バスで学校に通い、退屈な先生の退屈な授業を受け、休み時間は女友達とのどうでもいい恋バナをして、そして家に帰るといつものように家族揃ってご飯を食べて…、という平穏な日々を遣り過ごしている。
そんな毎日に物足りなさを覚えたアデルは他の女友達のように彼氏を作ってデートをし、セックスだってしてみるのだけど、それでも心の空白を埋めることが出来ないでいる。
「何かが違う」。そう感じたアデルは、彼氏とも別れ、友達に連れてこられたゲイバーで“彼女”に出逢ってしまうのだった。
髪の毛を鮮やかなブルーに染めた彼女の名は、エマ。
そう、彼女こそアデルが街中で偶然擦れ違ったとき、自分の心の深い部分に火を点けるような衝撃を与えて去っていった女の子だった。
偶然の再会に、何か運命的なものを感じたアデルは、そんなエマと何もかもを捨ててもいいほどの情熱的な恋に堕ちてゆく……。
自分の殻を破れないでいる平凡な女の子アデルと芸術家肌の奔放なレズビアンの女の子エマとの数年間にわたるそんな濃厚な愛の日々を詩的な美しい映像で綴るカンヌ映画祭パルムドール受賞作。

とにかく、この監督は人の顔をアップで撮るのが好きみたいですね~。
3時間という長い上映時間のほとんどがこのアデルとエマの顔のどアップで占められておりました。
もう冒頭から、主人公アデルのスパゲッティやらケバブやらをくちゃくちゃ食べるシーンが延々と繰り返されるのですが、普通、そんな挑戦的な演出はものの見事に失敗するのだけど、この監督さんの映像センスは素晴らしいですね。
このアデルという何処にでもいる平凡な女の子の等身大の魅力を見事に引き出していたと思います。
そんな彼女を虜にしてしまう青い髪のボーイッシュな少女エマとの濃密なベッドシーンも全然下品じゃなく、かといって必要以上に綺麗に美化されている訳でもなく、この絶妙なバランス感覚は凄く良かったです。

後半、互いの生活のすれ違いから2人は破綻に至るわけですが、そこで描かれるアデルの心理は女と女という狭い枠組みを超えた普遍的なもの。
辛い失恋を経験した男女なら誰もが共感できる、切ないものでした。
僕もちょっと過去の色んなことを思い出して思わず泣きそうになっちゃいました(笑)。

ただ、いかんせん長い!!
このストーリーなんてほとんどあって無きが如しお話に3時間弱はさすがに長すぎます。
2時間弱くらいに収めてくれたらもっと完成度の高い傑作になり得ただろうに。
そこらへんがちょっぴり惜しかったですが、人と人とが惹かれ合い愛し合いながらもそれでも擦れ違ってゆくさまを切なく描いた良質のラブストーリーでした。
かたゆき

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