尿道流れ者

レッド・ファミリーの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

レッド・ファミリー(2013年製作の映画)
3.2
組織や情勢などの状況により対立している人々も、一つの人間としてなら分かり合え、友情や愛を築くことが出来るというのはよく取り上げられるテーマで、この映画もそういった普遍的なテーマと朝鮮半島の南北での争いが主題となるコメディテイストのドラマ。

北朝鮮から韓国に工作員として乗り込んだ四人は祖国の家族のために偽りの家族を構成し、様々な任務を遂行していく。そんな工作員達が住む家の隣人は自分達とは正反対の価値観で暮らす人々。そこに起きる交流によって変わる何か、という映画。

キム・ギドクの映画はわずかしか観ていないがどれも粗く、そこが残念でいてかえって可愛らしくもある。残念な展開や演出のなかでも煌めくシーンがあって、その一瞬の輝きにのせられて、良い映画だと思ってしまう。
そんなキム・ギドク演出・脚本で新人監督が撮るとなれば粗さは倍増で、これってどうなの?と思うシーンが多かった。
それでもやはり煌めくシーンがあり、それがラストの船上でのシーン。掌を針金で突き刺され、文字通り繋がった偽りの家族がみせる儚い絆と夢。こんなもん泣きますよ。家庭にある良し悪しの全てを一つの尊いものとして肯定する素晴らしくシーン。愛し合おうが歪み合おうが、その対象があるだけでどれほどまでに幸せなことかというのを全身全霊表現している。

しかし、粗い。コメディや笑いは感性のなかでも非常に高度な理解と配慮が必要とされるものだと思うが、そこには凄く雑に感じた。序盤の理想的とも思われた家族が家に入った瞬間に豹変する場面なんかは面白くなるはずなのに全く面白くない。変貌に勢いが無く、驚きも楽しみもない。そこからも面白く出来そうでなってないシーンが続いて、映画としての完成度は良いものを感じなかったが、船上のシーンだけでこの映画は見る価値があると思える。たった10分程度でも良いシーンがあれば、映画は良いものになるんだなと感動した。

隣家の奥さん役のカン・ウンジンが可愛くも駄目な人妻で萌え。工作員家族の娘のカバ?の絵が入ったスウェットにも萌えた。