げんきげんきばいばい

アクト・オブ・キリングのげんきげんきばいばいのレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
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昔、タイに住んでいた時に母に「ひとりで外出すると、売られて、内臓とられちゃうよ」と言われていたのを思い出した。その時、私は何と無くその言葉に現実味を感じず、例えば「寝ないとお化けが来るよ」とかそういった類いの御伽噺のように思っていた。

アクトオブキリングで虐殺者達の語る言葉も、同じように私にはフィクションのように感じられて驚いた。誰もがこの作品をみて、その驚愕の事実や実態に恐れたり、生々しさを感じているのに、私にはそれがなかった。
それは多分映画で映される彼らの事を同じ人間のように感じなかったからだ。恐ろしいことに、そこで私は「彼らとは違う」と自分を彼らとハッキリ線引きしてしまったのである。

しかし、想像力を働かせて考えると、自分がもし当時のインドネシアで、共産党員は悪だと叩き込まれていたら、殺すまではしないまでも、もしそれが使命だとしたらその悪に加担してしまったかもしれない。私は自らをプレマンと名乗る人々は実はガチガチに洗脳されてしまっているように感じた。そんな馬鹿げたことはしないと思っても、生まれた環境が違えば誰にだって有り得た話なのだ。悪と善の境界線が曖昧になってるように感じた。もしかしたら境界線などないのかもしれない。

ただただ後味の悪さが残って、嫌な気分になった。殺した人の悪夢にうなされるという言葉も私には全く信じられなかった