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サッドティーのamuのレビュー・感想・評価

サッドティー(2013年製作の映画)
4.1
言うても今泉ビギナーな私。「愛がなんだ」と「mellow」を観たくらいでわかった気になっていたのでは恥ずかしい。掘り下げて昔の作品を観てみることに。でも、スターウォーズやアベンジャーズのように、例えばこの作品のためにはこの作品も観ておかねばなるまいといった知識入れや義務感とはまるきり違う。「愛がなんだ」と「mellow」で感じた監督の世界観と脚本、演出に惹かれたのだ。だから単純に他の作品も観てみたい、観たい、観るといった具合だ。

「mellow」でのレビューの中にその言葉は多く見受けられた。

…昔の作品の方が好きです。…


今泉ビギナーの私とは反対に、今泉作品をそれも昔から観ていらっしゃる方々の愛としか受け取れない辛口の言葉たち。羨ましいと思った。これも自分を恥じた理由のひとつとなり、響き、過去作品に触れることへの取っ掛りとなった。

で、実際観てみて、思ったこと。

…昔の作品の方が圧倒的に好きです。…

映画専門学校「ENBUゼミナール」による劇場公開映画製作ワークショップ「CINEMA PROJECT」の第2弾作品として製作されたとのことですが、キャスティングといい、長回し具合といい、音楽といい、テーマといい、わかんないですけど、これがこれぞ今泉監督さなのかなと思った。

「愛がなんだ」でのテーマだった愛ってなんだろう、そしてこれはそれ以前の好きってなんだろうということ。好きの重さ軽さ受け取り方渡し方、言わんとするところは私が観た「愛がなんだ」と「mellow」と根本的には同じことだと思う。だからこれは今泉監督の中の永遠のテーマであり、疑問であり、表現したいことなのだろうと思う。そしてこの色んな好きや愛のかたちは、少なくとも私には本当にザクザクと響くものがある。

改めて好きってなんだろう、愛ってなんだろうと考えたことは無かった。だけど心の片隅にずっといた疑問のようなその感情を、監督は真っ直ぐに、そして優しく、時に残酷なまでに表現されていて、永遠の疑問で答えなど出ないこの、人との関わり合い、もっと言えば生きていく上で原点となる「好き」「愛」についてをこれほどナチュラルに映像にしてくれたことに感謝のような気持ちにすらなった。

過去作品の方が好き、という理由については、インディーズな役者さんを起用していることも大きい気がするし、不器用さのようなトガりを感じたから。

日常の自然な、かといって例えば二股だったりていうのは誰もがしていることでは無いし、悪とされることだし、だけど二人を行き来することで柏木は保たれているのかもしれないし、人には本当にたくさん、色んな歴史と感情とかあると思うから、ひとつの側面から悪と決めつけることなど出来ないと思うんです。私は二股はしていないけれど、そんなふうに思ったりします。友達がこの柏木のようであったとしても見守りたいし。

監督の作品は観る者誰もが感情移入出来ないところにも良さがあるのでは無いかな、と思う。


最後に役者陣について。

柏木役の岡部さん、すごくいいですね。かっこいいシソンヌじろうみたい。ぴょこんと飛び出した寝癖みたいな髪には一切触れないけれど、触れるのはナンセンスなのだろう。

青柳文子さん。初めて可愛いと思った。青文字読モとして人気だった頃から私は三戸なつめちゃんの方が好きだったし、ギョロ目なとことか好きになれなかったんですが、骨格バランスが美しく顔の作りもキュート。モデル出身の方って、静止画の方が映える動いたら駄目なタイプの人とそうでない人といるけど、まさかの後者だったんだなと感じてる。関係ないけど、桐谷美玲は静止画タイプ。

國武綾さん。あれ?岸井ゆきのちゃん?と調べちゃった。似てるな。でも途中からなんかどっかで見たことあるよな、、、とめちゃくちゃ考えて思い出しこれまた調べたら合ってた。「恋の渦」のあの子だ!でもって、この作品自体が途中からもう「恋の渦・おしゃれバージョン」に感じてた。

ほかの女優さんたちもどこかの作品で観たような、観てなかったとしても初めてな気がしない自然感に溢れてました。

内田慈さんはもう爪痕残したがり勢女優インディーズ部門二位くらいのイメージの方なので、アクが強い。喋り方とかノリとか好きじゃないわ~っていつも思う。

二ノ宮さん。他作品観てみようと思った。作中、すごいちょうどいい「自分のことをめちゃめちゃ好きなクラスメイトで、自分は全く好きじゃない」人物にピッタリすぎ。空気みたいに消えたりして笑った。

より一層、今泉監督の作るものに触れたいと思いました。まだまだ初めて観れるものがある今を、幸せに思う。

それからジャケットのイラストのこと。私の好きなイラストレーターさんのタッチに似ていたので調べたところ、ジャケットのデザインを担当したデザイナーさんが写真からイラスト起こしをしたとのこと。同じくこのイラストが気になったらしい江口寿史先生が公式に質問されていてテンションあがった。
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