♪ 息を切らして走っても
雲はどこへもついてくる
時折 滲む夕暮れに想いを馳せて
低予算映画の弱点。
それは、ロケ地と配役の幅が狭まること、じゃないでしょうか。
お金を持っている(筈の)役柄なのに、住んでいるのが玄関とリビングが直結しているアパートだったり、父親が四十代前半の役者さんで子供が二十代前半の役者さんだったり。
勿論、そんな状況だってあり得ますけどね。
それが積み重なると違和感が拭えなくなるのです。なので、特殊効果や美術にお金を掛けられない、ということよりも重要なポイントだと僕は思います。
ただ、コメディならば軽くても良い。
…と考えたのかどうかは分かりませんが、軽妙な物語なら軽妙な背景も多少は馴染むわけで。観客側も視点を落とすことに抵抗がなくなる…可能性も高まるのでしょう。たぶん。
さて、本作の場合。
その弱点を凌駕するほどに抱腹絶倒…とまでは行かず。かなり、かなぁぁぁり、微妙な手触りでした。
何よりも配役が絶妙に微妙。
特に強烈なのが「俺は死神をやめるぞッ」と宣言した主人公を演じた芹澤興人さん。画面に収まっているだけで“得体のしれないオーラ”が満ちていて、色々とおなかいっぱいになりました。
また、彼に巻き込まれた死神を演じた岡田あがささんも強烈。ぶっちゃけた話、死神以上に死神のオーラが溢れていて…いや、マジで怖いっス。勘弁っス。勘弁勘弁ハシムニカ。
ただ《ターニャ》を演じた小堀友里絵さんの雰囲気は良かったですね。今は声優さんとして活躍されているそうですが、エネルギーに満ち溢れた印象で気持ちが良かったです。
ちなみに、本作のタイトルは『死神ターニャ』ですが、彼女自身は死神でも何でもないので、その辺りは要注意です。というか、ゴロと勢いで決めたタイトルなのかな。
まあ、そんなわけで。
低予算のコメディで言えば王道の作り。
観客に祈る気持ちにさせる着地点と、スタッフロール最後のショットは見事なバランスなので、幅を広げるような気持ちで臨むことをオススメします。