キネ旬シアターにて。
グザヴィエ・ドランが紛う事無き天才である、と確信した作品。
「わたしはロランス」の後に、この作品をこんなカタチで撮れるのが、逆に凄い。
元は戯曲との事ですが、「映像と音楽の魔法」である映画に、見事に書き換えられてるんじゃないでしょうか。
一見、淡々と進む展開で緩慢な印象になりがちですが、不安を掻き立てる様な劇伴、思わせぶりなカメラワークとカット割、何気の無い会話や表情から狂気を孕ませる見事な演技。全く、気を揺す隙がありません。
全編に流れる不穏な緊張感が、頭の悪い言い方ですが、本当にヤバイです。
みんなに愛される様な、分かりやすいクライマックスやエモーショナルピークは最後の最後まで、訪れる事は無く、寧ろ、そのアンチクライマックスな空気感はエンドロールが終わるまで、続く。
観客の心に「何か」を残すやり方として、こういうやり方もあるのですね。