垂直落下式サミング

邪願霊の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

邪願霊(1988年製作の映画)
3.6
女性アイドル歌手の密着取材として撮影された映像素材の中に、映ってはいけないものが映っていたというフェイクドキュメンタリーホラー作品。
ストーリーのかなり早い段階から、映像の背景に妙な女性が立っているというのは、怖いと言うよりはむしろ笑ってしまう。
背景に心霊が移りこむというアイディアは、この段階ではまだ十分なギミックとしてストーリーに活かしきれていないが、のちに『女優霊』で理想的な表現技法に結実することになる「映像のなかに霊を見つける」恐怖描写は、かなり斬新だったと思う。
今なおレンタルビデオ店に無数に入荷される実録心霊映像作品(フェイクドキュメンタリー・ファウンドフッテージ)の元祖としても、日本の映像史における重要性は高い。
ぼんやりとした影、たたずむ女、作曲者不明の曲、関係者の死、ここに関連性を見出だした時、人は心霊を意識する。それを映像編集という名の強引さで無理矢理に一本の線で繋げられ、否が応にもリアルなものとして目を向けさせられるわけだ。
終盤の大パニック描写もやり過ぎていてなかなか楽しいが、ラストの「霊の視点」が入り込むことで著しくリアリティが削がれる。一人称視点によって得られる効果は共感、死者と生者が交わることはないのだから、こちら側の媒体に干渉してくるのは都合がよすぎる気もする。
アイドル役の女の子は80年代アイドルとしてはわりに可愛いし、ヒロインのリポーター役の女性も結構美人だ。
映像特典は、水野春朗先生が語る自身の心霊体験と、クライマックス撮影後のセットで竹中直人が変顔をしている様子。謎。