Kana

それでも夜は明けるのKanaのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.0
19世紀アメリカで実際に起こった人種差別の闇を描いた物語。
非常に暗く重く、胸が痛くなる映画なのですが、涙を流すことはありませんでした。
それはこの作品が意図的に、あまり感情移入をされない作りになっているからかもしれません。
主人公の硬く結んだ唇が、どれだけのやりきれない感情を噛みしめているのかと想像させますが、決してそれを明らかにすることはありません。
悲しいとか、かわいそうとか、今更そんな陳腐な同情を引くことに意味はなく、涙で目を曇らせずに真実を見つめてもらうために、そうゆう作風にしたのではないでしょうか。
誰もが1度は見るべきです。

ただ始まりから終わりまで延々と感じたのは、人類への怒りと失望、そして無力感。
どうして…なぜ…どうすれば…という言葉がぐるぐると頭の中を巡りましたが。。。
きっと、答えなんかないんだろう。
考え続けるしかない。

もし自分だったら…と考えても、想定できるのはあくまで誘拐監禁事件かなんかです。
もちろんそれでも恐ろしいことですが、さらに恐ろしいのは当時はあれが日常だったということ。
社会に認められた制度だったということ。

人種差別問題と書きましたが、奴隷制度の問題と人種差別の問題はおそらく別物ですよね。
ただ根本的には同じ気がするのです。
差別するから奴隷にするのか、奴隷だから差別が容認されるのか、という。
日本でもほんの100年程度前まで人身売買が行われてたそうですし、未だに女性蔑視の考えは根深く残ります。
アメリカの黒人差別はもっとずっと顕著です。
例えばキリスト教が正しいのなら、人はみな神の子で平等でなくてはならないのに、残念ながら世界中どこを探しても完全に平等な世界なんてありません。

ただ少なくとも、人が人を所有するなんてあってはならない。
戦う権利や逃げる権利すら奪われるなんてあってはならない。
それなのに、今でもインドや北朝鮮には何千万人もの奴隷がいるという…。
闇は決して過去のものではなく、今もなお至るところに存在し続けているということを忘れてはいけません。
Kana

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