Denkishino

それでも夜は明けるのDenkishinoのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.6
原題は「12年間の奴隷」
自由黒人であったソロモン・ノーサップの伝記による作品。

終始、奴隷制度の理不尽さと凄惨な状況が流れます。時折の無言のシーンと、夕暮れのシーンはとても綺麗で凄惨なシーンとの対比が印象的でした。アカデミー賞としては、奴隷制度を扱った真剣な作品を見過ごすことはできないでしょう。映画としての魅力もありましたが、それ以上の意味合いでの受賞に思えます。

常に辛さが充満していて、さすがに息苦しかった感じでした。酷い仕打ちに、裏切り、嫉妬といい気持ちは全くしません。ラストも解放感というよりは脱力です。ようやくあれが終わったという。それが狙いなのかも知れませんね。役者さんも迫る感じの、その様子にこちらも呑まれます。しかし救済かのように、ブラピ演じる奴隷制反対の人物。唐突な奴隷制反対論者の登場は変に嘘くさく、説教くさく感じてしまいましたね。ここまできたら、たまたま少し良い人がいた程度の方が人間らしい。
とにかく奴隷制度への嫌悪感と繰り返さないことを伝える雰囲気で、それは十分わかりますが、映画として何か心のどこかに何かを残すかといえば、「奴隷制ダメ、ぜったい」ということのみではと思ってしまいます。私の読みが浅いとも思われますが、さすがにどうにも窮屈で…。いや、あの鬼のようなアメリカ人夫妻。いや、鬼の目にも涙すらない、悪鬼みたいな。白人の悪ーいやつっていう、それもまた単純過ぎないかと思ってしまうんです。事実に基づくのなら致し方ありませんが、何か心に残すには、どこかの緩みは必要な気がしました。
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