小さな子供に小鳥が窓ガラスに衝突して死んだ時に、その死んだ理由を貴方は説明できるか…或いはどう説明するか?
7歳の娘〝メイベル〟は、癌に侵され小さな命が途絶えようとしている。
これは単なる子供が病気で亡くなる、可哀想なお涙頂戴映画ではない…むしろ、その先の話し。
もちろん〝命〟の物語ではあるが、宗教・神をも否定し信じる行為すら疑う現実的な〝命〟の物語。
舞台はベルギーの田舎町、〝メイベル〟の父〝ディディエ〟はカウボーイに憧れブルーグラスを演奏するミュージシャン。母はタトゥーショップで働き、全身至る場所にタトゥーの〝エリーゼ〟。
物語はどんどん過去にさかのぼりながら進み、スローな展開から徐々に加速し現在と過去をクロスさせる編集手法が面白さを増幅させる。
それは幸福の時と不幸の時を重ね合わせ比較する事で、より現在と過去の変化を明確に表現する。
深刻で重い内容ながら、随所で〝ディディエ〟率いるブルーグラスバンドの演奏が癒しのような心地になる。
スコットランドからアメリカに移民としてやってきた伝承音楽をアレンジし〝ビル・モンロー〟によって確立されたブルーグラスというジャンルは、バンジョー、ギター、マンドリン、ヴァイオリン、ウッドベースを中心としたアコースティックな音色で古臭い印象はあっても楽器と人間だけで奏で映画に情緒感を溢れるさせる。
俳優(もしかしたらミュージシャンかも)たちが本当に演奏し歌っているのかは知らないが、妻〝エリーゼ〟役のベルル・バーテンスの歌声はココロに染み入る素晴らしさ。
理由も根拠もない〝信じる〟という漠然とした行為は、冷静に現実的に考えればバカげている行為かもしれない。
信じれば病気が治る訳でもないし、死んだものを生き返らせる訳でもない。
ましてや奇跡など起こるものではなく、稀な出来事や結果に対して勝手に奇跡と結びつけてしまう人間の単純さ。
全ての出来事には理由が有り、全ての生命には終わりが有る…これが現実。
生命が途絶えたとき、天国へ行った?…星になった?…鳥に生まれ変わった?…それはすべて嘘で現実ではない。
それでも…それでも世界中の人々が〝信じる〟行為を続けるのは、自身への戒めと慰めなのかもしれない..★,