消費者

呪われた都市伝説 紫鏡の消費者のネタバレレビュー・内容・結末

呪われた都市伝説 紫鏡(2011年製作の映画)
1.3

このレビューはネタバレを含みます

・あらすじ
看護学生の北川冴子は気がつくと全く知らない森にいた
何故ここにいるのか、ここはどこなのか
何も分からぬままに森を歩いていくと大きな廃屋に辿り着く
その時、突如現れた血まみれの男性に助けを求められるが間も無く彼は死んでしまう
そして現れた2人の男
男達に追われた冴子は咄嗟に逃げてしまうが彼らもまた彼女と同様に突然、森に飛ばされた人達だった
1人、また1人と現れる人々
そして相次ぐ死…
それはとある言葉の呪いによるもの
“紫鏡”、20歳まで覚えていると死んでしまう、という都市伝説こそがその正体だった
果たして彼らは死を免れる事は出来るのか?
という一昔前に流行った2chの都市伝説を題材としたホラー作品

・鑑賞理由
「サイレントヒル」、「きさらぎ駅」、「ザ・ヴォイド」、「ミスト」と異世界ホラー作品を観てきてもう少し他にも観たいな、と思って作品の低評価ぶりを知りつつも“紫鏡”の都市伝説を知っていた事もあって興味を惹かれ鑑賞

・感想
「きさらぎ駅」や「N号棟」、「真・鮫島事件」など最近流行りの2ch都市伝説を題材にする事自体は面白いし、作中で語られていく紫鏡の設定や特性とその回避方法に関する推察なども悪くない
けどそもそもの作品自体が評判通り極めてつまらなかった

マイナーな監督による低予算の作品、という事は分かった上で観たので演技や映像の安さなどはあらかじめ覚悟していたしそこを責めるつもりはない
ただ何より酷かったのは低予算なりに工夫して面白くしよう、という気概を全く感じ取れなかった事
それが無ければインディー作品や低予算作品はそもそも撮る意味がないだろ、というのが正直な感想

酷かった点はいくつもある
カメラの数を確保する資金が無かったのかバリエーションに欠けるカメラワーク
それを補おうとしてかほぼ全て台詞で説明していく描かれ方
あまりにもトロい展開
発見や出来事でテンポ良く進んでいくのではなく会話でばかり膨らんでいく推察
そして紫鏡の呪いの根源であろう少女を全然活かさなかった事…
これらの粗が相互的に影響しあって作品の質をより下げていた様に感じる
良かった点と言えばせいぜい割とエグめなゴア描写があった事くらいか…
特に気になったのがカメラワークのバラエティの無さ
低予算ゆえにカメラワークや映像演出に凝る事が難しかったのならPOVや「きさらぎ駅」の様なFPSスタイルの撮影技法などを採用するだけでも少しはマシに出来ただろ、と…

先程も書いた通り紫鏡にまつわる設定自体は悪くない
・廃屋の一室に張り巡らされた無数の4桁の数字が書かれた紙は森に飛ばされた人々の生まれた時刻か、あるいは現実世界から飛ばされた時間という推理
・気を失っている間だけ現実世界に引き戻される事から考えられた死ぬ予定の時間を現実世界で過ぎれば助かるのでは、という説
・死ぬと遺体が現実世界に戻る為に消失するという現象
・紫鏡の事を忘れれば助かる為、気の触れた人だけが助かるという事実
・とある少女が体に現れた紫斑が鏡に映る事を嫌がり、鏡を紫に塗りつぶしたが死んでしまった、という呪いの根源である少女の設定
これらはちゃんと活かせば十分面白いストーリーにする事が出来たはず

役者陣の名誉の為に言っておくと彼ら彼女らの芝居自体はB級作品なら全然許容範囲と言えるレベルでそこまで大根というほどではなかった
だからこそ揉み合いや悲鳴の使い方などが酷い点がかなり目立っていた
冴子がみどりの「死ぬんだ」という言葉を止めようとした場面の口を覆うのではなく首の両脇を掴んだのなんかその最たる物で何がしたかったのかマジで分からない
飛ばされた人々の誕生日が同じ事に気付いた時だったか、純子が悲鳴を上げたタイミングも突然過ぎてめちゃくちゃ

そしてあれだけ怖がっていたのにも関わらず冴子と共に生き残っていた青年、健治に首を絞めてもらって気絶して現実世界に戻った矢先に親友に普通に紫鏡という言葉を言っていたのも「いや何で???」となった
言葉を覚えている事が死を招くのに改めて思い出させてどうすんだよ…
エンディングの健治が首を吊った所に気の触れた2人と呪いの主である少女がわちゃわちゃする場面なんかも紫鏡の恐ろしさを帳消しにする様な見え方になっていたし本当にちゃんと面白い作品を撮る気が無かったんだろうな…と悪いけど思った

この手の作品にここまで大真面目に問題点を指摘していく事自体が野暮なのかもしれないけどB級なりの頑張りが無かった事が本当にイラついてどうしても言いたくなった
監督はこの作品を撮る事で何を表現したかったんだろうか?
そこから謎に思えてしまう
本作以上に低予算で撮影技法、キャストの演技力、ストーリーの出来などが悪い「ノクタ」という作品を観た事があるんだけどその作品はまだゴアや汚物描写をめちゃめちゃ振り切っていた
そういう売りさえもこの作品には無い
都市伝説を題材にするのなら予算や監督の能力の範囲内で十分に面白く出来る物を選ぶべきだったんじゃなかろうか

・総括
都市伝説を題材に映画を撮る、というのはまっさらな所から自分のアイディアで作品を組み立てていくのではなく既存の注目度がそれなりにある題材を利用する、という事だ
どうせ他人の生み出した物をそうして題材にするのならそこに自分が何を乗っけられるのか
それはちゃんと面白くなるのか
そういった事と向き合った上で作品を撮って欲しい

スコアは設定に対しての物で作品全体に対する物じゃないという事は一応言っておく
消費者

消費者