秀ポン

New York 結婚狂騒曲の秀ポンのレビュー・感想・評価

New York 結婚狂騒曲(2008年製作の映画)
3.6
ブルーカラーのジェフリーディーンモーガンとホワイトカラーのコリンファースが対比され、両者の良さがより出ていた。JDMの人懐っこそうな感じとか、コリンファースの紳士的で若干神経質そうなところとか。
一方で主人公はそんなに面白くなかった。2人の良さを邪魔しないくらいの感じだった。
(今パルプフィクションの彼女だと知ってびっくりした)

序盤の、JDMが非常階段で階下の男の子の部屋に行くシーンがめっちゃ良かった。

話自体は微妙だった。
ラブコメのテンプレートは強力なので何しても一定以上は面白いんだけど、その中では微妙な方。
特に誰かに感情移入はせずに、絵を眺めるみたいに見てたのが良くないのかもしれない。

しかしその見方のおかげで、普段ならイラついていたであろう部分の数々を穏やかに見過ごすことができた。

例えばラジオを私的に使うシーン。これは2度も行われる。
『善き人のためのソナタ』みたいに、公的な発表の中に私的なメッセージを忍ばせるというエモさは大好きだ。
しかしこれはそうじゃない。2人以外にも、関係者や無関係のリスナー達にまで自分達の関係をあけっぴろげにしている。
ラジオを私的に使うこと自体がダメなわけではない(空気階段の踊り場での公開プロポーズとか最高だったし)。ただ、自分達が浮気の関係にあることを少しでも自覚してんのか?ということ。コリンファースにまで聞かれてるじゃん。

また、例えばラストの結婚式のシーン。
当日になってコリンファースに伝えたり、スプリンクラーで参列客を追い払ったり。ちゃんと見てたらマジでムカついてただろうなと思う。こんなクソ下らない用事に消防車を呼んでんじゃねえよ。

これらのシーンに共通する心理は
「自分たちの恋愛のために全世界が奉仕している」という感覚だ。
周りの迷惑とかはどうでも良くて、自分たちの恋愛だけが重要という感覚。

そのラブコメ的な感覚自体が嫌いというわけではなく、その感覚を当人達が自覚しているかどうかが自分にとって大事なのかもしれない。
自覚してればOK、『天気の子』とか最高!
自覚してなかったらクソ!『ある天文学者の恋文』とか。
この価値観が自分の中に本当にあるのかどうか、この視点でこれまで見てきたラブコメ群を振り返ってみようと思った。

この映画については、話は微妙だけど、JDMが良かったので良い映画だと思った。
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