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午後の網目のくりふのレビュー・感想・評価

午後の網目(1943年製作の映画)
4.0
【知と美が撹拌される稀有な体験①】

《マヤ・デレン全映画作品》短編7本の上映にて、見ました。
彼女、ウクライナのキーフ生まれだったのですね。

『午後の網目』

当時ハリウッドに住みながら、撮られた第一作。

その、人工的な南国、というような風景にまず惹かれます。白く緩やかな上り坂に、マルホランド・ドライブに続くような錯覚をしつつ。昼下がりに生じる、悪夢とその反復と、反復でずれてゆく自分たち。夢幻ループの中、夢を直接手で掴みたい、というような足掻きがヒリヒリ来ます。

『アンダルシアの犬』の血を感じますが、こちらは観念よりも皮膚感覚が凄い。スラッシャー・ホラーの知られざる祖でないの? という画も出て来ますね。しかしサイレントとして作られたのに、後から付けられた、和な音楽は耳障り。最後の夫となったテイジ・イトーによるものですが、これは判断ミスだと思う。

<2010.1.21記>
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