藤見実

恐怖のまわり道の藤見実のレビュー・感想・評価

恐怖のまわり道(1945年製作の映画)
3.5
NYのしがない酒場のピアニストは同じく酒場の歌手と結婚の予定を立てているが、歌手の女は何故かLAに行って力試しをしたいと言う。そして何故か男は素直についていくわけでもなく、少し経ってからヒッチハイクで追いかける。ヒッチハイクが怖い(『ヒッチャー』の逆で運転手がヤバいやつ的な)かと思いきや、車に乗せてくれた色々ヤバそうなエピソードを開陳してくる金持ちの小男は雨の中突然死してしまう。ドアを開けるとごろっと死体が落ちてきて、困ったのはヒッチハイクした方の男である。ここから話は全部意図しない形でノワールになっていく。この変貌の仕様はとても黒沢清に似ている。どうせ殺したと思われるので慌てて死体を隠したり服を盗んだり車を走らせたりしているも段々余裕が出てきて、ガソリンスタンドで困ってそうな女を拾うとそいつは実は車の持ち主を知っている人物だった。この女が何故か一度爆睡してから起き上がる時の変貌ぶりがまたすごい。ごろっと起き上がる。

あとはそんなに面白いところがなく、しばらく経って電話線で女の首を絞めてしまう(これも過失でしかなく、意図せざる結果なのだが)ところの手の握り様とかが面白い。

突然得体の知れないものに指さされこの様な運命に巻き込まれることがあるのだ、という物語の典型的な動力をここまでやり通したのはすごい。でもまあ会話のシーンとか演出が一様で女優の顔で持ってる感じが怠いとしか思えなかったのでみんながそこまで傑作評価しているのはよくわからない。
藤見実

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