あんがすざろっく

ファインディング・ドリーのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

ファインディング・ドリー(2016年製作の映画)
5.0
シリーズものって、大体パート1(オリジナル)のヒットを受けて作られるもので、これは実はとても縛りとかプレッシャーとか、ファンからの過度の期待に晒されたりで、成功させるのが難しい。ピクサーで言えば、「カーズ」も「モンスターズ・インク」も、どうしてもオリジナルの魅力を追い越せなかったように思える(カーズはクロスロードを観る前だったので、パート2だけはやはり好きになれません)。「トイ・ストーリー」シリーズは奇跡の賜物だ。「ファインディング・ニモ」も、大ファンが一杯いる訳で、これはオリジナルを超えるのは至難の業である。
おまけに、公開時期が近いことで比較されてしまいがちなのが、本家ディズニーの「ズートピア」だ。
「ズートピア」がビックリする程の大傑作だっただけに、さぁ同じアニメーションとして、この冷めやらぬ感動を凌げるのか。
いやいや、負けず劣らずの良作だった。
「ズートピア」が人種差別とか確執といった、人間世界の暗部を、見事なポジティブパワーで描ききった、大きな括りのエンターテイメントであったのに対し、本作のテーマは前作同様、「家族」という、個の物語が展開される。
ニモやマーリン、ドリーといった、キャラクター人気を見事に消化(昇華)させ、ファンの期待にしっかりと応えている。
今回はドリーの家族探しになっていて、あの忘れっぽいドリーが家族を探す?と、それだけでハラハラである。
だが、パート1でも、わが子を探すマーリンの行く手を阻む様々な難局を乗り越えたのは、他でもないドリーのエネルギーだ。
自分の信じたことを疑わず、脇目もふらずに一直線。
誰かが助けてくれなきゃ何もできない、と思っていても、周りがドリーに振り回され、でも結局は事態が好転していく。
彼女を心の奥底から信じたのは、幼いニモだが、マーリンや本作のハンクが少しドリーを迷惑がるのは、ドリーが子供のような純粋さを持っていて、大人の思考では考えられない行動をするからだろう。
ドリーには健忘症がある訳だが、だからと言って、偏見の目で見てはいけない。
彼女はそれこそ大人が「忘れがち」な、大事な「何か」を、しっかり思い出させてくれる。
子供を持つ親ならば、号泣必至。
「ズートピア」になくて本作にあるものと言ったら、
ウェットな家族愛だろう。
あんがすざろっく

あんがすざろっく