MasaichiYaguchi

オール・イズ・ロスト 最後の手紙のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.4
上映時間106分に出演するのはロバート・レッドフォード唯一人、だから当然会話も無く、主人公のモノローグのみなのだが、それも殆ど無い。
インド洋を一人でヨットを駆る主人公がアクシデントにより遭難し、自分の現在位置も分からないまま嵐に襲われたり、飢えや渇きに苛まれながら何とかサバイバルしようと悪戦苦闘する様を描く。
ワンシュチュエーションによるリアルなサバイバルの一人芝居なので、体力気力共余裕がないと辛いかもしれない。
だから脚本と監督を担当したJ・C・チャンダーは、こでもかという感じで老境の主人公に試練を与え、生きる為に必要な物を何度も奪っていく展開にしている。
撮影の大半はメキシコのバジャ・スタジオの大きな水槽を使って行われたようだが、朝夕の海原の風景、大迫力の嵐のシーン等、見事に表現していると思う。
それにしてもこれだけの長丁場を、少ない台詞で一人芝居したロバート・レッドフォードは凄いと思う。
タイトルが示す通り、自ら支えている物をどんどん失って「ゼロ」になっていく主人公は、今に至るまでの自分と向き合い、そして内省していく。
最後まで航海の目的も名前も明かされない主人公の内省の言葉は我々に「生きる意味」を問うてくる。
全てを無くした先に主人公が見出したものは観客の思いに委ねられている。