垂直落下式サミング

超高速!参勤交代の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

超高速!参勤交代(2014年製作の映画)
4.0
1年間の江戸での勤めを終えて帰国した弱小貧乏藩の殿様が、幕府に5日後に再び参勤せよとの無理難題を突きつけられ、通常ならば準備に半年、移動に8日はかかる道のりを、家来とともに大急ぎで参勤するところを描いている。
実は、これは藩の所有する金山を没収するための陰謀で、幕府の刺客が彼等一行の邪魔をしてくるのだ。
公開時に劇場でみた。時代劇だからか、いつもみるような映画よりも観客の年齢層が高く、地元のイオンが珍しくほぼ満席状態だったことを覚えている。聞けば2014年邦画のスマッシュヒットを記録したらしい。なるほど、カラッと楽しめるエンターテイメントに餓えていた層にとって、この映画は程よい刺激を提供したのだろう。今でもしっかりとこういった作品の需要はあってそれなりにヒットするんだから、るろ剣や銀魂にばっか逃げなくてもいいのよ。
映画館は、役者たちの掛け合いや井戸に落ちるシーンなどで、劇場に自然な笑いが起きていて、なんだか居心地のいい空間。世代の違う人たちのビビッドな反応込みで体感できるのは、劇場ならではだった。
丁寧に張った伏線を完璧に回収し、細密な脚本を徹底したリアリズムで映像化したとか、なにか特別なアイデアがあって、それがストーリーを引っ張っていくようなハイクラスな映画だとは言えないのだけど、ちゃんと一定数の人を楽しませられるエンターテイメントとして作ってある。
『駆込み女と駆出し男』『殿、利息でござる!』『家族はつらいよ』なんかも劇場でみたが、やはり本作をみたときと同じような年配の方が多くいらっしゃって、その場面場面でちゃんと面白がってくれるので、その場にいるだけで映画の内容以上に満足度が高まっていくような、本当にいい感じの雰囲気だった。
上でタイトルを挙げた映画群は、邦画の古典的な物語を新しい価値観で再解釈しており、ストーリーや演出そのものは古臭いのに、各々テーマとしているものにどこか現代性を持たせた奇妙なバランスでおはなしを成り立たせている。これが映画会社の意図的な戦略なのかはわからないが、ここにきて盛り返しつつある松竹ルネッサンスを応援したい。