都部

映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 ペコと5人の探検隊の都部のレビュー・感想・評価

3.7
旧劇から新劇への転換による作品全体の完成度の向上という点では、恐らく本作が最も素晴らしく、旧劇のみならず原作漫画を織り交ぜた換骨奪胎によって無二の完成度を誇る一作である。

バウワンコ王国の王子ペコとの交流を通した剛田武の葛藤と成長の魅力は取り零しなく据え置きとして、映像作品としてバシッと決まった画の挿入や年端もいかない子供ならではの心情の変化を演技の妙により表現することで、彼を心情巡るドラマの序破急の変化に良い意味で分かりやすい強弱を付けているから物語にのめり込みやすい作りであった。

前半部分の冒険劇は旧劇の流れをおよそ忠実に再現していて、ギャグ的なトーンのキレは落ちているように思うが、この辺は作品の温度感が剛田武の内面に寄っているからであるように感じた。それ自体は丁寧な作りであるから構わないが、忠実な再現のせいか 大魔境の前半部分の問題点である物語のテンポの悪さも欲を言えば改善して欲しかった。

バウワンコ王国の画一的なキャラクター達も多様さを獲得しており、特に魅力的な難敵としての説得力を持ったサーベル隊長の演技/描写は物語終盤の緊張感を高める結果に繋がっている。ブルススやスピアナ姫にもそれぞれ見せ場が与えられていて、それと関与するドラえもんとペコの友情物語としての質感も克明で深刻味を感じさせるものになっているのも良い。のび太VSサーベル隊長がちゃんと主人公の見せ場になってるのがいいですね──剛田武が主人公の作品とも言えるが、語り部の存在感はしっかりと発揮させる気の利かせ方。あとしずかの人間的な魅力──ただ女の子であるという一行に切り捨てられない──にもフィーチャーしている。

クライマックスの盛り上げ方も完璧。
予言の成就と巨神像による活劇はしっかりと熱い展開になっていて、序盤から終盤まで隙のない映画であると断言できます。
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