n0701

エスケイプ・フロム・トゥモローのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

明日から逃げるんだ。

頑張れパパ。

物語はパパが会社をクビにされたところから始まる。なんて日だ!なんて冗談は言っていられない。なぜなら今日は有名な夢の国に行く日だからだ。

男女の子どもを連れて家族サービス。
そんなテンションじゃないし、妻はうるさいし、最悪なコンディションだ。

子ども向けのアトラクションはクッソつまらないのに、寝てると最低と怒られる。妻にキスをせがめば最低と罵られる。

最低な気分なのはパパの方だ!!

だが、そんな最低な状態でもパパに転機が訪れる。可愛い子がこっちを見てるのだ。こっちというのは、パパではない。息子のことだ。

そしてパパははしゃぐ。
可愛い子を追いかけ回してはしゃぎまわる。

でもそれもスペースマウンテンまでだ。

息子はジェットコースターは乗れなかったのだ。ゲロゲロのマーライオン状態のところを妻に見つかり問い詰められる。何しとんねんと。

そして妻が息子を連れていき、娘を相手にすることに。

娘は人にぶつかったり、医務室に運ばれたりしながら、それなりに楽しんでいる。

だがパパはターキーを食べながら隣のベンチに座った婦人にあらぬ妄想に…

いや、これは明日訪れる深刻な日々から逃げ出すためだけの妄想だ。

何の着地点もなければ、オチもなくて当然だ。
ただの現実逃避なのだから。

しかしプールで追いかけてた女の子と喋っているところや、フランス語の勉強をしているところを見つかり、妻は訝しむ。

しかもやけ酒とクソつまらん夢のアトラクションのせいでビールが進み、アトラクションの途中でパパは吐いてしまう。

気分最悪の妻は、夫に詰め寄る。

あんた、浮気してるんでしょと。

そしてクビになったことを打ち明ける。

この時点で妻は現実に戻り、ディズニーどころではなくなる。

酩酊の中、妄想を繰り返す親父は二人組の女の子の気になっていた方に一緒に来てと言い寄られる。

そこで彼は現実に引き戻され、彼女の誘いを断る。ツバを吐きかけられ、娘を見失うも彼はさらに妄想の奥深くまで潜り込む。

物語の主題はここにあるといっても過言ではない。妄想の中で、ベンチに座ったセクシーな女とセックスしても、スケベな妄想を越えて目の前に現実としてチャンスが表れたとき、不意にそれを拒否してしまうということを言いたいのだ。

彼には仕事もなければ家族だってあってないようなものだ。なのに捨てられない。思いきれない。それが根幹だ。

だが、妄想の果てに若い女にツバを吐きかけられたと思ったら、ディズニーランドの地下に存在する謎の組織に拉致された後、洗脳されそうになるがたまたま持ち合わせていた歯磨き粉で機械を破壊して危機を脱出する。

そして行方不明の娘を探すと、魔女の待つ部屋に行き着く。そこで、どうにかこうにか娘を奪還して部屋に帰るも、パパは猫インフルエンザにより死んでしまう。

ラストはあってないようなものだ。
脈絡なく続けられる妄想は加速度的に飛躍し、現実を押し退けて、迫りくる逃げられない日々を完璧に消し去って意味不明な指向性を以て苦しみの矛先を変える。

そもそも、ビッグサンダーマウンテンのエピソードも突然クビになった自分の状況を表し、魔女のエピソードも自分の境遇を表現したただの皮肉だ。

すべては無職の酔っ払いスケベ親父の悲しい妄想に過ぎないのだ。

あらゆることは夢と現実の狭間だ。
死さえも。それでも許される。なぜならここは夢の国だからだ。この時間だけは夢を覚めさせない。

素晴らしい。狂ってる。
n0701

n0701