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愛の嵐のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

愛の嵐(1973年製作の映画)
4.0
ナチスの親衛隊だった男とゲットーに収容された美少女。二度と会ってはいけなかったはずの男女が出会い、破滅に向かってゆく倒錯した愛を、女性監督リリアーナ・カヴァーニが描いた衝撃作。
原題:Il Portiere di notte( 英) The Night Porter (1973)

1957年、冬のウィーン。
戦時中ナチス親衛隊の将校だったマックス(ダーク・ボガード)は、素性を隠し、二流ホテルで夜のフロント係兼ポーターとして働いてる。
そのホテルに、客として、アメリカの有名なオペラ指揮者(マリノ・マッセ)に伴われた妻ルチア(シャーロット・ランプリング)が現れる。
彼女は、13年前マックスが強制収容所(ゲットー)で歪んだ性欲のはけ口として倒錯的に弄んだユダヤ人の少女だった。
ルチアは動揺し、即座にウィーンを去ろうとするが、二人は抗えない感情に支配され、ゲットー時代の倒錯した愛(快楽)の嵐へと叩き落とされていく…。
一方、ホテルでは、自分たちの悪行を知っている人々("証人")をつ次々と消し去ってきた元親衛隊の残党(弁護士(フィリップ・ルロワ)やバレエダンサーら)が会合を開らいていたが、新たに、ルチアが"証人"として浮かび上がる…。

女性監督リリアーナ・カヴァーニの演出はもちろんだが、ダーク・ボガードの好演と、当時29才のシャーロット・ランプリングの妖しい眼差・魅力が、この作品を印象深くしている。
なお、背徳的とされたアパートでの大胆な性描写はビスコンティ監督などの抗議により、検閲を免れた。
戦争での残酷な悲劇を、善と悪で単純化できない人間の本性(性=サガ)を突き詰める形で描いた怖い映画である。
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