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泣く男のtkykのネタバレレビュー・内容・結末

泣く男(2014年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

レフンの「ドライヴ」と昔話のごんぎつねと「アジョシ」を足したような作品だった。

「ドライヴ」要素については、エレベーターの場面がそう感じさせた。「ドライヴ」ではエレベーターの中の場面の光の演出やストーリー上の役割が印象的だったが、本作は「ドライヴ」以上にエレベーターが印象的だった。エレベーター内の光の微妙な違いや閉鎖空間であるという事が作品内でのエレベーター空間を象徴的な空間にしていた。
その具体例として、ゴンとモギョンが対面して言葉を交わす場面はエレベーター内のみであり、それ以外の場面では直接対面していない。この事からも、エレベーターが2人の交流する場所という重要な役割を担っていたと言える。
とにかくエレベーターの閉鎖的な特性を外部とは違う世界として利用する演出は見事であり、「ドライヴ」を連想させた。

「アジョシ」的な要素としてはストーリーの類似性が挙げられる。「アジョシ」では母を失った子供を救うのに対し、本作は娘を失った女性を救う話である。どちらも救う動機が、自分の喪失体験と重なったから、という点で共通している。しかし本作の方がその喪失体験が主人公のキャラクター背景と深く関わっているように感じた。
ストーリー以外でもアクション部分、特にナイフアクションに類似性を感じた。監督が同じなのでそうなるのも当然だと思うが、本作もナイフアクションが素晴らしく、アパートの場面は本作の1番の名シーンだった。明らかにこの場面だけ、他の場面と気合の入れようが違うように感じたし、この場面のナイフアクションだけでも、本作は傑作だと言える。
ガンアクションに関してもいろんな銃が出てくるのでとても楽しめたし、やはりアパートでの銃撃戦は最高だった。とにかくアパートの場面は本当に気合を入れていた事がこれでもかと伝わってきた。
ガジェットという点ではいろんなガジェットが物語内で使われていたのも面白かった。

ごんぎつね要素は主人公の名前がゴンである事や、ゴンが正体を明かさずにモギョンを助ける事、最終的に助けていたモギョン自身に銃殺される事がまさにごんぎつねと同じであり、監督がごんぎつねを読んだのではないかと思う程だった。

若干湿っぽさが過剰に感じる部分もあったが、「アジョシ」好きな身としてはとても満足できる作品だった。
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