【神を信じるデビルマン】
ドゥニ監督は前作『灼熱の魂』の印象が強く、今回の舞台もてっきりカナダと思ってみ始めたらどうも違う(笑)。ペンシルヴェニア州のお話で、ロケもカナダでなくジョージア州で行ったフルアメリカ映画なのですね。
それでもこの、クローネンバーグ映画のような冷たい空気感はカナダっぽいと思いましたが。監督の個性はやっぱり出ていると思います。
で、犯人捜しパートが段々ダレて来るし、特にミスリードに時間取り過ぎていること、この構成だと犯人が人間というよりオチとして描かれてしまって弱い…という辺りが不満でしたが概ね面白く、色々遊べる作品でした。
予想通り、ただのミステリでは終わりませんでしたね。底に流れる寓意は、神がいない世界では、神と悪魔に代わって人間が戦っているってことなのかと。そこで彼らは簡単に悪魔に堕ちるし、神が何もしないから、悪魔と戦うには悪魔になるしかない、と彼らは思い込む。
ドゥニ監督は前作に続いて宗教戦争を描いているようす。それが実はアメリカの郊外で、現在進行形で行われているってことなのだと思います。
キリスト教による、肉体を使ったヴァーチャル・ウォーズ(笑)。デフォルメされていますが、このオソロシー感覚はわかる気がしますね。キリスト教には暴力がもれなくセットで付いて来る、という怖さも前作から継いでいます。
ジェイク演じる刑事ロキは無能に見えますが、彼は宗教戦争においては部外者だから、ということなのだと思う。
で、とばっちりを食うのが子供たち(含むかつての子供たち)で、これがもう酷いんですよね。だからロキに最後、あの役割を与えたのは本作の矜持だと思った。ハタ迷惑な宗教戦争から救い出すのはやっぱり彼しかいないでしょう。
…と、この視点から掘ると色々出てきそうですが、余裕ないのでやめときます(笑)。ただ、掘り甲斐のある作品であることは確かですね。
ロジャー・ディーキンスの撮影は今回も見事ですが、その前に、美術監督がまず世界観のヒントにしたのがグレゴリー・クリュードソンだそうでこれすごく納得。
本作、画としてもじっくりと浸れる完成度ですね。最後は、あれで気付いて一件落着となるのでしょうが、あの中にいる時間があの人物にとっては贖罪期間にもなるのだから、簡単に見つからない方がたぶんいいんだろうな…と思いました(笑)。
あそこでながーく反省したから一件落着、となってもマズイと思いますけどね。
<2014.6.16記>