他の旧約聖書系の作品と系統が異なる作品。
他作品では神の絶対的な正義を大義にして、神陣営の人間を正当化しているイメージ。神は正しいんだから、神に仕えている人間も正しいよねみたいな。
本作品はセトの子孫とカインの子孫という善悪の枠組みが存在しながらにして、ノアが人間に善し悪しなど存在しないということに気がつく。ノアとその家族たちの葛藤を経過し、必ずしも正しいとはいえない方向性を持った終わり方をする。
結局は禁断の果実を食べた人間の子孫は欲からは逃げられず、自分たちだけが生き残る正当性を失ってもなお結局生き続けてしまう人間のしょうがなさが表現されている。
しかもそれが、ノアがそんな自分たちを許すか否かの選択が、神に決定権を与えられたものだったという終わり方は、神の寛大さを表すものでもあるしそう思ってしまう人間の傲慢さを表すものでもあるのかなと思う。
ただしこういう考察のヒントは一切作品から与えられないので、観た人によって感想が変わる作品であり制作陣から考察の余地のあるものを丸投げされている気分になるので、必ずしもお勧めとは言い難い作品。