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マッドマックス 怒りのデス・ロードのTOTのレビュー・感想・評価

4.6
デス・ロードの上で、ただひたすらに生き、ただひたすらに死ぬ、狂おしくて愛おしい世界。
水と血とガソリンがなければ生きていけない、誰もが乾く砂漠で、マックスもイモータン・ジョーも、ウォー・ボーイズもフュリオサや子産み女たちも、命を懸けてひたすら戦う。
前作から更にスケールアップした善悪の対立と狂騒、激しいカーチェイスと闘いのさなかで瞬きの間に次々と消えていく命に息もつけないほど圧倒され、最初から最後まで涙が止まらない。

イモータン・ジョーが作り出すディストピアで、女は産む道具であり、肥え太らせ搾乳する対象だ。
フュリオサも、もとは故郷から攫われ子産み女となるも片腕をもがれ大隊長まで上り詰めた存在。
第一作でマックスが担った復讐の役割を今回はフュリオサが担い、彼女の復讐心と故郷への渇望が子産み女たちを解放し、鉄馬の女たちを走らせるのだ。歴史!
マックスをも突き動かし共闘へと導くフュリオサと女たちの闘い、性差による苦痛が強調された生き難い世界で闘う彼女たちの強さ、鉄馬の老女が守り子産み女へ渡る食物の種、未来への希望の尊さは、激しく胸を打ち、観ている私も照射する。
さあ、お前はどう戦うの?って。

監督の頭の中がそのまま再現されたようなビジュアルも音楽も最高だ。
ヤマアラシ特高車やドラムワゴン、長い棒の突端につかまり車と車を渡る闘い、醜い搾乳装置、かき鳴らされるギターと鳴り響く太鼓の音、ジャンキーXLのスコア。どこをとってもマッド・マックスに似つかわしい完璧に狂った世界。

だけど、何より、マックスの生への苦悩の旅が、この21世紀にもう一度現れたこと、愛する者が消えた世界でサヴァイヴしようとしていること、物語を続けてくれていることに私はメチャクチャ感動した。
忘れていた他人との関わりを経て、たとえ一瞬であっても、フュリオサの瞳のように、子産み女たちの肌のように、鉄馬の女たちの闘志のように、キラキラとした熱がマックスに宿ったことに感動した。

マックスが生きようとしている、女たちが生きようとしている、ウォー・ボーイズだってヴァルハラを夢見て命をかけて戦っている。
これがファンタジーであっても、夢物語であっても、緑の地を求めて戦ったフュリオサたちのように、希望を持つことをやめようとしてそれでも熱を持って生きてしまうマックスのように、私も今日を明日を生きよう。
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