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思い出のマーニーのくりふのレビュー・感想・評価

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
4.0
【愛は潜伏する】

原作に興味が湧き先に読みました。1967年作の児童文学だと忘れるような、新鮮な療法的作風に驚き、途中から面白さ加速で一気読み。これを米林監督の感覚で今、ジブリで映画にするとは鈴木さん、いい仕事してるじゃん。

が、映像化でよくなった点と改悪点が混在し、特に後半は原作情報の消化試合というふうで、余韻と拡がりに欠け惜しい仕上がりでした。

良くも悪くも、本作は言葉に重きを置いていますね。言葉をヒントに留め、物語の流れの中でその答えが結ばれるところはよかった。

が、後半になると、言葉による説明ばかりになってしまう。物語が抱える秘密をわかり易く明かしてはいますが、映画としてはお安くなり興醒めです。

原作はもちろん言葉で綴られていますが、言葉そのものよりアンナ(=杏奈)の体験そのものが重要でした。言い換えれば、かの地で過ごした時の厚みが大切だったということで、これは確かに100分程度の映画で表すには難しいところですが…他に手はなかったのかなあ?

杏奈が自覚する問題は1:私がキライ、2:魔法の輪(友達の輪!)の内側に入れない、ことでしたが、1の答えは素直に描かれ頷いちゃった。予告編では浮きまくる「あなたが大好き!」という言葉は、あなたが実は誰をも指すかを、ある仕掛けもありズドン、と心に飛び来んでくる流れになっているんですね。

逆に2の方は、それこそもっとハッキリ言葉にした方がよかった。この答えは輪の中に入ることではないので、違う受け取りをする人も出ると思う。…別にそれが悪いことでもないですが。

とはいえ、米林監督は杏奈とマーニーの物語を誠実に綴っています。生硬いところも多いですが、彼女たちに素直によかったね、と声をかけたくなりました。そして、その気持ちは自分の現実にもかえってくるんですよね。本作は子供の問題が描かれる一方、それを生み出してしまう大人の問題にも触れていますから。

が、こちらがまた惜しくてね。特に「果たせなかった母」の描写が弱いこと。ここが起点で、実はいちばんの温床じゃないかと思うのだけれど。

ネタバレ自粛で暈しますが、マーニーの秘密でいちばん心を打たれたのは、愛情表現はどんなかたちであれ記憶される、ということでした。そしてその記憶はどんなに時間が経っても蘇る、というのが本作で語る「真実の愛」ではないかと。

ディズニーが連発するその言葉を胡散臭く感じている私は、こちらでけっこう癒されました。

他にも色々感じたことはあるのですが、この辺にしておきます。気が向いたら本作の仕掛けで感心したことなど、別途書いてみたいと思います。

あと、アリエッティの時と同じで、ジブリ関連作からの連想で単純に楽しんだこと…。

あの無口な老人、十一はアルムおんじだと思う。あの時代は寡黙な老木は畏怖されたけど、現代では子供にからかわれてしまうというね。

でも、ということは彼の傍、別世界で癒される少女二人って…ハイジとクララではありませんか! 現代らしくちょっとメンヘラでね。

うわ、本当にそうじゃないかと思えてきた(笑)。

<2014.8.4記>
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