垂直落下式サミング

ドロップの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ドロップ(2008年製作の映画)
3.7
不良に憧れた少年が、私立の中学校から荒れた公立校に転校する。髪を染めてオラオラだけどケンカは弱くて、いきなり番長格にのされてしまうが、持ち前のクチの上手さで不良の世界に順応。仲間たちとアウトローな青春を謳歌していく様子を描いている。漫才師・品川祐監督の第一作目。
半自伝とのこと。品川さんの年齢を鑑みるに、全国で約5万人いるとも言われた暴走族が最盛期を過ぎて、警察も暴対法施行にむけて取り締まりを強めていたころだ。この時期に、関東圏で不良やってた人たちの証言は、かなり貴重なものだと思う。
「不良」なるものの定義が変わりゆく頃。義理人情を持った反骨心の意思表明であったバンカラは衰退して、ただ体力をもて余した町の乱暴者に変わっていく過渡期である。
ヤンキーたちの倫理から任侠が抜け落ちて空洞化したことで、チーマーやカラーギャングを経て、今日的なDQNへと流れていく時代の匂いを感じた。
ここに描かれているのは、男一匹ガキ大将にビーバップからクローズまで、新旧の不良スピリッツが入り交じりながらグラデーションで混在している世界観。時代の空気をとらえているようなキャラクター描写を打ち出したのは、他の不良作品にはない魅力的なところ。
でも、不良たちが面と向かって人をバカにするのは嫌でした。特に店員の森三中の人をいじるときが不快。どんなDQNなグループだって、あんなに場を気まずくしないですよ。
笑いをこらえながら愛想よく注文をし終えてから、「あいつドムみたいだったよな。」って仲間内でヒソヒソクスクス言うんだよ。オトコの子の世界ってこうだから。わかってないなー。
嫌われ芸人品川の鼻につく背景さえ気にならなければ、そこそこの映画。宮川大輔や上地雄輔のガチ職人っぽさもいいし、ファミレス襲撃シーンもかっこいい。
車もいかちー!やっぱかっこいいな。庶民の自家用車なのに男性性の象徴みたいなトヨタ・クラウン!新型…、なんであんなダサくなっちゃったんだろ。角ばってるのがかっこいいのに。牡蠣がドロッとしたようなデザインじゃあ、森喜朗も怒っちゃうね。