Eike

デンジャラス・バディのEikeのレビュー・感想・評価

デンジャラス・バディ(2013年製作の映画)
3.5
本作の成功の鍵はメリッサ嬢ですが、彼女に食われることも辞さずに本作に挑んだブロック嬢もエラいですね。

サンドラ・ブロック嬢といえば2000年の「デンジャラス・ビューティ―」でコメディ演技を披露し人気を博し、2009年の「幸せの隠れ場所」のシリアス演技でオスカーを獲得。
現在のベテラン女優陣にあっては押しも押されぬ看板女優であります。
好感度の高いキャラクター性に加えてコメディからシリアスドラマまでこなす芸達者ぶりに個人的には「女性版トム・ハンクス」という印象をうけます。
しかしあまりにそつのない好感度キャラと言うのも逆に作品選びを難しくしている様な気もいたします。

本作でサンドラ嬢が扮するサラ・アッシュバーン女史はFBI、NY支局のエースでおまけに上昇志向が人一倍高い人物。
しかしその能力の高さと、非社交的な態度もあって他の捜査官からは総スカンを食っております。
そんな彼女が昇進をかけた任務でボストンへ。
そこで出合ったのがボストン市警の刑事シャノン・マリンズ(メリッサ・マッカーシー)。
アッシュバーンは不承不承、この「規格外」の女性刑事と協力して謎の大物麻薬ディーラー、ラーキンを追う事になるのだが...。

キャラの違うコンビが反発し合いながら事件を追う展開はこれまで幾多の作品で見て来たものですが本作は女性コンビである点が売りです。
しかも本作は完全に「コメディ」なのだ。
とは言え、物語の骨格自体はポリスドラマでコメディとしての要素は特に目につきません。
ではなぜ本作がコメディとして成功しているのかと言えばマッカーシー女史扮するシャノン刑事のもつ強力な個性故と断言してしまいましょう。

FBI捜査官といえばブロック女史は既に「デンジャラス・ビューティー」で2度も経験済み。
世間ずれしていたり周囲とコミュニケーションに問題があるキャラクター設定に関しては本作も同様で特に目新しさがある訳ではない。
しかしマッカーシー女史扮する「やさぐれ女刑事(笑)」とコンビを組む事でサンドラ嬢のキャラにも無理なくスポットライトが当たる結果となっており凸凹コンビとして巧く機能しております。
これは何より、大スターであるサンドラ嬢のスター・パワーに胡坐をかくことなく、メリッサ嬢とのコンビネーションを第一考えて作られたが故だと言えましょう。

従って本作を楽しめるかどうかはメリッサ・マッカーシー嬢の演技に乗れるかどうか次第と言えます。
考えてみれば女性のコメディアンを前面に出した作品が目につき始めたのも2000年代に入ってからでしょうか。
このご時世、女性の容姿や人となりを笑いのネタにする点にはどうしても不謹慎さや後ろめたさも拭えない訳で、素直に楽しめない点があったりします。
ですが本作でのメリッサ嬢は確信犯的にガンガンとその武器を使って観客にアピールを仕掛けてまいります。
本作での彼女は見かけどおりどころかそれを軽く超えるガサツでワイルドなキャラを嬉々として演じており、その堂々としたビッチぶりに次第に抵抗感も失せてしまいます。
残念ながら吹替えでは伝わりにくいですがFワード連発の超お下劣なマシンガン・トーク&啖呵が実にお見事で聞いていると次第に爽快に思えて来ます。
つまり単に笑いを取りに来るのではなくきちんとキャラクターとしての演技ができているという証でしょう。

メリッサ嬢、実際にはサンドラ嬢より6歳年下な訳ですが、劇中ではこの大スターに対しても一歩も引かない。
その辺りはさすがにスタンダップコメディエンヌとしてニューヨークの一流クラブで実力を磨いただけのことはあります。

ポリスドラマとしての基本を踏襲しつつ、凸凹女性コンビによる異色のバディ・コメディとして成功している快作。
当然のことながら続編へのGOが出ているようです。
しかしマッカーシー嬢、ブロック嬢ともに依然として大人気ですからまだ先になりそうですね。
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