鈴木パンナコッタ

猿の惑星:新世紀(ライジング)の鈴木パンナコッタのレビュー・感想・評価

3.8
「俺たち猿は仲間同士で争って滅んだ人間にはならないぞ!」と誓いを込めた「猿は猿を殺さない」の掟によって、猿たちが人間と同じ道を辿る皮肉がしびれる。人間への憎悪によって掟を捨てたコバを「お前はもう猿じゃない」と殺すことで、シーザー自身も猿ではなくなるという。
立場と感情の間で揺れ動くシーザーのかっこよさは白眉で、人間との争いを全力で回避しながらも、リーダーとして一度始まった戦争を引き受ける……というラストは実に切ない。たまたま前作の家に行く展開は強引さを感じるものの、エモさは見事。
シーザーに父親としての立場が加わることで、前作で目立った表情による感情表現は息子に引き継がれる。若さゆえに分かりやすい過激思想に傾倒し、間違いに気付くショックがひしひしと伝わる。映像技術による猿の演技は相変わらず素晴らしい。
前半は文句なしで面白く、人間と猿の間で関係が築かれるが、同時にいつ破綻するか分からない綱渡りの緊張感が漂う。ただ、後半の戦争がコバの個人的な感情によってのみ始まるのは、ちょっとコバに背負わせすぎな気が。人間がもっと具体的に猿たちを虐待しているとか、大義が欲しいところ。
シーザーとコバの育ちの違いによって根本的な人間に対するスタンスで対立するのは分かるんだけど、それで群れ全体が動くには弱い気がするのよね。大半が勢いに流されるだけというのは、まあ現実もそんなもんかもしれないけど。良くも悪くも、シーザーの話に終止している。