てつこてつ

ホテルコパンのてつこてつのレビュー・感想・評価

ホテルコパン(2014年製作の映画)
4.0
思わぬ拾い物!非常に緻密な脚本構成がなされた多様な登場キャラクターが織りなす、これぞ、’グランドホテル形式’といった秀作。

1998年の長野五輪時には賑わっていた、大会ジャンプスキー台を見晴らす立地でありながらも、今は、客足もめっきり途絶えてしまった寂れたペンションホテル。2年前に起こった、とある事件から逃れるようにして、今はこのホテルの使用人として働いている主人公、かつての繁盛を取り戻す事に異常な執着を見せるホテル支配人、スレた感情で世の流れを斜に構えて見ているような若い女性使用人。

このホテルに滞在するために現れるのも、愛情依存症の今ドキなタイプの若い女性とその恋人、怪しい宗教集団の教祖と、文字通り彼に身も心も捧げようとする美しい信者、かつては名を馳せたが、今やエキストラの役しかオファーされない老女優と彼女の献身的な売れない役者である付き人、そして、唯一、市原隼人演じる主人公の過去のトラウマを知る謎の妙齢の女性・・と、クセの強い宿泊客ばかり。

物語の終盤、子供が出来た祝福に若いカップルのために、宿泊客全員を集めたホテル主催のパーティ-で、実にドラマチックに、登場人物の裏の顔がさらけ出されて、最後は全てにキチンとしたヲチが付く。

ゲストがホテルを去った後のエピソードは余分??かと思いきや、最後の最後に主人公のトラウマが本当の意味で解消される本当に重要なシーンが待っています。

この作品では、中盤で主人公の過去を知る謎の女性が彼を連れ出し迫る行為、あまりにもドラマチック過ぎるパーティーのシーンに違和感を感じなければ、素直に好きになれる作品ではないでしょうか?

登場人物一人一人のキャラクター設定もとても丁寧だし(個人的には李麗仙演じる老女優と大谷幸広演じる付き人のエピソードが一番琴線に触れた)、目ヂカラや硬派な容貌とは真逆な心がボロボロに折れている役柄を見事に演じきった主演の市原隼人はもちろん、出演している役者がみんな演技が上手いからキチンと成立できた素敵な作品でした。
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