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ジャージー・ボーイズのくりふのレビュー・感想・評価

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
3.5
【原作舞台を見た後だと、薄い。】

公開時にみて、曖昧な印象だったので投稿も後回しにしてました。

(当時)先日、原作舞台の来日公演に行ったのに併せ、本作も再見。アメリカではあまりウケなかったようですが、舞台と比べるとわかる気はします。

強引にいうと、舞台はカルピス原液のようで、それをクリント味に薄めていますね。舞台が広く知られている中で、それが口に合わぬ人は多かろう、と思った。

舞台は物語としても濃いですが、ミュージカルだから楽曲がメイン、ドラマは前座。むしろ楽曲の中にドラマや人物の心情を込め歌い上げ、歌そのものから世界を広げるところが見事だと思った。

映画は逆ですね。ドラマを語る途中に楽曲が挟まるという構成。前半は、駆け足で状況説明をする舞台に比べずっと見応えがあるのですが、後半、舞台でいうと第二幕、人間関係が崩れてゆく辺りからのドラマがどうにもペラい。

台詞など、脚本は驚くほど舞台に忠実なのですが、逆に楽曲依存でドラマを圧縮している舞台の特性が、映画では悪い方に転んだと思った。フランキー・ヴァリの家族や恋人など、あまりに紋切型でちょっと、苦笑してしまう。

楽曲の弱さで特に気になったのは、フォー・シーズンズ初ヒット三連打を、がっつり歌い切らず途中でドラマに転び失速すること。あと、「君の瞳に恋してる」復活劇はあまりに素っ気ない。ディナーショーの中継かと思っちゃった。これらは、舞台とは演出をかなり変えていますね。

最後のミュージカルは楽しいですが、この楽しさをもっと早く、多く出してほしかった。折角だから、元ダンサーであるクリスファー・ウォーケンのパフォーマンスももっと見たかったですね。年齢的にももう、難しいのだろうけど…。

映画ならではの味わいもありましたが、どちらかというと、私には舞台の方が面白く、得るものも多かったです。

<2015.7.3記>
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