竜平

ゴーン・ガールの竜平のレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.4
ある日突然姿を消してしまう妻と、いきなりの出来事に困惑する夫。やがて浮かび上がってくる事の真相や過去、それぞれの思惑。そして事態は思いもよらぬ方向へ、という話。どんより系サスペンス及びスリラー。

これぞデヴィッド・フィンチャーと言えるような、彼の作品特有の空気感が終始漂う。それは『セブン』や『ドラゴンタトゥーの女』にもあるような独特の静けさと暗さ。真実を隠しつつ体裁を取り繕ったり、嘘をついたりと人間の陰湿な部分がとことん描かれる。作中での人間模様、そこに行き着いてしまう経緯なんかはやっぱり人間の性だなぁなんて思うんだけど、にしても、これはそこらのホラーよりもずっと恐い内容。この世で一番恐いのは幽霊よりも何よりも人間だろうと、そんな気持ちになるのはきっと俺だけじゃないはず。また失踪した妻を見つけるだけの話にとどまらず、メディアや世論も絡んでの二転三転していく展開に目が釘付けになる。細かい内容には敢えてあまり触れないでおくけど、サスペンスやスリラーというジャンルの中で更に人間の心理や男女感の本質といった部分にまでズバズバと切り込んでいくあたり本当に見事だし、事実の明かし方というのも秀逸。とにかくめちゃくちゃ深い。とりあえず未婚の人からすると「結婚」というものが本当にネガティブなものに見えてしまうんじゃないかな、自分も若干その口。くれぐれも私生活にトレースしないように、って感じかな。途中から「そっちかよッ」と、その方向性にも驚かされること請け合い、鳥肌モノ。

失踪する妻エイミーに扮するロザンムンド・パイクの怪演が光る光る。ベン・アフレックもハマり役。たまに無性に見たくなる良作、いや怪作。ただ初見の衝撃をどうしても越えられない作品でもある、それもまた乙なもんだなと。ぜひ一度ご賞味あれ。
竜平

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