あらた

ゴーン・ガールのあらたのレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.2
面白いことは間違いない。
でも、途中から思っていたジャンルとは別方向へ向かっていった。

基本的には家族関係の欺瞞性を描いた作品なのだと思う。
序盤の夫婦間の無理解も一方的に理想を押し付ける親子関係も家族というものの持つ欺瞞性を表しているし、それは観ている自分たちにとっても身近でスリリングなものだ。
例えば、「私(妻)が体調悪い時に食べたいものは?」という作中のクイズはそれを観ている私にも「お前は妻のことをどれだけ理解してるのか」と問いかけてくる。

しかし、後半になるとこの家族関係の欺瞞性というテーマが後退していく。
なぜなら、エイミーの圧倒的な怪物性がそれを塗りつぶしていくからだ。
エイミーのある種の行動が夫にだけでなく、他の男に対してもなされていたことが判明していくにつれて、この映画は夫婦という1組の男女の関係性の話をはみ出し、エイミーという怪物の物語と化していく、とも言える。
そして、それによって視聴者にとって自分たち夫婦にも起こりうる話からエイミーだからこそ起きた話になってしまったように思う。
もちろんそれはそれで面白いのだが、観ている自分と作品との距離が開いてしまったのは少し残念に感じた。

また、アメリカのメディアや司法のあり方、貧困問題、女性論など多様な切り口のある作品でもある。
あらた

あらた