持て余す

ゴーン・ガールの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

タイトルはとてもとても有名で、なんか評判もいいみたい──そんなぐらいしか知らなかったから、主演がベン・アフレックなことも監督がデヴィッド・フィンチャーなことも知らなかったし、こんなに怖くて不快で面白い話なこともしらなかった。

これ「女性は怖い」ではなくて、「嫁は怖い」でも足りなくて、結局のところは「エイミーが怖い」って話だと思う。

淡々と描かれる序盤の失踪事件のあらましが、とてもいい。ここが淡々と描かれるので、誰かに寄った偏った見方を拒む。そのために、実のところ誰が悪いのかが見えにくくなる。だから、中盤でエイミーが登場するシーンの衝撃はなかなか強い。

そこからの顛末も強烈だ。

確かに、ニックには大きな落ち度がある。エイミーが失踪するに至った最大の理由はニックの不貞だし、それ以外にもエイミーがあれほどのことをするに至る理由を作ったのは、誰あろうニックだ。

ただ、これを安易に自業自得だとか自己責任だとかで括るわけにはいかない。あのぐらいの落ち度──罪に対しての罰が大き過ぎる。ニックの罪は偏に彼のだらしなさに由来する。悪意は殆どない。保身のために嘘はついても、欺こうという意図は見えない。平たく言えば、バカなのだ。愚かで、非常に人間的なのだ。

それに対して、エイミーはモンスターだ。

彼女がニックの不貞に腹をたてるのは裏切りへの悲しみであるようには見えない。自分よりも頭は悪く、その癖若くて胸の大きな女にバカなニックを寝取られたことが不快なのだ。極論すれば、エイミーが許す相手であれば問題ないとさえ言えるのではないか。

そうしたメンタルの彼女なので、やることは極端で周到だ。緻密で大胆な計画は見事に完遂される。

ここから先がこの物語の肝なのだけど、少し不満も感じる。些細なことからエイミーの計画には綻びが出るのだけど、そこからは緻密さとはかけ離れた杜撰な突貫工事的犯罪で、彼女は無事に生還した人になる。

これが嫌だった。

ニックが過ぎた罰を受けたのに対し、エイミーは人まで殺して無罰というのもモヤモヤするし、きちんと調べたら極めて不自然なところが、彼女にとってだけ都合よくうやむやになる。この一連のなにかに言い知れない気持ち悪さを覚えてしまう。

この物語のモデルなった事件(ちょっと調べてみたけど、モデルというには全然違うように感じた)が起きた頃なら、この程度の捜査で終了してしまいそうな感じもするけど、なにかの力が働いていない限りいまはそんなに甘くないと思う。それとも、アメリカってあんなものなのかな。

こんな無理筋が通ってしまう理由が描写されるか、エイミーの嘘が露見(匂わせるだけでも)するかすれば、もっとよかった思うのだけど、これは個人の趣味の問題。そうでなくとも大変面白かった。
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